がん細胞の「ボスキャラ」を見つけ出して、やっつけろ!
がん細胞の「ボスキャラ」を探し出せ!
「がん」は医学の進歩で、根治(完全に治ること)率は徐々に上がっていますが、死に至ることもある怖い病気です。がんが怖いのは、外科手術や化学療法で治ったように見えても、再発したりほかの臓器に転移したりするからです。がん細胞の「ボスキャラ」とも言われている「がん幹細胞」がなくならない限り、再発や転移が起きたり、新しいがん細胞が次々と作り出されてしまうのです。逆に言うと、がん幹細胞を消滅させられれば、再発や転移も防げることになります。そこで現在、多くのがん細胞の中からがん幹細胞を見つけ出す研究が進んでいます。
見つけるための「目印」が必要
がん幹細胞を見つけ出す場合、蛍光色素を使う方法が一般的です。がん幹細胞は薬物を投与されてもすぐに排出してしまうため、蛍光色素でも着色されません。そこで、その性質を使って、がん細胞全体を蛍光着色して蛍光を発さない細胞を見つけ出す方法が考案されました。
ただし、この方法には非常に高価で大型の実験設備が必要な上、現在使われている色素では、患者さんの身体から取り出した「死んだ状態のがん幹細胞」を見つけることはできません。蛍光色素に代わるもので、顕微鏡程度の器機でも見つけ出せる新しい「目印の付け方」が大きな課題です。
細胞をがん化させる遺伝子を目印に
がん幹細胞を見つけ出す方法として、細胞をがん化させる遺伝子の1つである「RAS」を目印にする「免疫組織化学染色法」が注目されています。この方法自体は、すでに多くの研究機関や病院で行われていますが、RASではがん幹細胞とそのほかのがん細胞との区別が付きにくいのが難点です。何らかの方法を併用し、がん幹細胞だけに目印を付ける工夫が必要です。さらに、がんの種類ごとに細胞の形質が異なっているので、目印を付ける方法も複数必要かもしれません。
地味な研究ですが、がん幹細胞の動きを観察できるようになれば、がんの「ボスキャラ」だけを狙って攻撃できる画期的な特効薬が開発されることも期待されているのです。
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先生情報 / 大学情報
九州医療科学大学 生命医科学部 生命医科学科 准教授 宮本 朋幸 先生
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