睡眠時の呼吸トラブルを歯からのアプローチで治す
寝ている間に繰り返し呼吸が止まる
「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:以下SAS)」は、寝ている間に呼吸が何度も止まる「無呼吸」や、気道の空気の流れが悪くなり呼吸量が減少する「低呼吸」を繰り返す病気です。女性より男性の方が圧倒的にかかりやすく、SASになると本人は眠っているつもりでも十分な睡眠がとれず、頭痛や日中の居眠りを引き起こします。ひどい場合には日常生活に支障をきたし、睡眠時の呼吸停止から突然死を引き起こしかねません。チェルノブイリ原発事故(1986年)などは、SASによる作業員の誤操作だという説もあります。
息がしづらい原因は
SASの原因は、睡眠時に空気の通り道である気道がふさがって狭くなり、呼吸がしづらくなることです。原因はいくつかありますが、加齢で舌の筋力が低下すると、寝る姿勢になった時に重力で舌が沈んで気道をふさいでしまうこともあります。また肥満で首周りについた脂肪や骨格の問題、アデノイドや生まれつき舌が大きい場合なども、睡眠時に気道を狭める原因になります。
SASの診療は呼吸器科や循環器科、あるいは「いびき外来」などと呼ばれる専門科などで行われており、「CPAP(シーパップ)」という鼻に装着したマスクから持続的に空気を送り込む治療法が一般的です。しかしこれは装置が大掛かりで、手軽に快眠が得られるとは言えません。
歯科治療は新たなステージへと進化する
そこで、歯科医が行う治療が注目を集めています。歯科装具、いわゆるマウスピースを使って気道が広がるように噛み合わせを調節して、空気を通しやすくするのです。最近では、内視鏡を使って気道の状態を確認し、効果判定を行う臨床研究も進められています。この方法で症状が改善した人たちを追跡調査し、SASがほかの病気の症状に悪影響を及ぼすこともわかってきました。
歯科は虫歯の治療や義歯などを作るだけではなく、幅広い病気の治療を担う新たなステージへと進化しているのです。
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大阪大学 歯学部 顎口腔機能治療学講座 教授 阪井 丘芳 先生
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