クマが冬眠するメカニズムとは?
冬眠するクマ・しないクマ
冬眠とは、寒い時期に動物が食物の摂食や運動を中止して、代謝活動を低下させた状態で冬季を過ごすことです。クマも冬眠する動物として知られていますが、そのうち、熱帯地域に生息するマレーグマや南米のメガネグマなどは冬眠をしません。現在、日本で一番南に住むツキノワグマは四国に生息していますが、やはり冬眠します。四国には剣岳(つるぎだけ)など、険しく高い山々が多いからと考えられています。
さて、クマは冬眠中、どのような行動をしているのでしょうか。
クマの生き残り戦略
クマは、一切飲まず食わずのまま、春まで4カ月ほど穴の中で眠り続けます。冬眠する動物と言えば、ヘビ、カエル、カメなどの変温動物をはじめ、コウモリやリス、ネズミなどの小動物が多く、ツキノワグマやヒグマのような大きな動物が冬眠するのは、大変珍しいことです。こうした行動は、長い進化の過程の中で、彼らにとって大きなメリットがあったからこそ得られたものと言えます。
もともとクマは、肉を食べる動物でした。そこから進化して、今では摂取する食料の90%以上を植物質に変えています。しかし、冬の間は食べ物がなくなってしまうため、冬が訪れる前に木の実を大量に食べることで脂肪を貯え、冬眠中はひたすら眠りながらカロリー消費を制御していくのです。このような生活パターンは、クマ特有の進化であり、与えられた環境の中で生き残るための戦略でもあったのです。
クマの冬眠を人間に応用?
なかにはクマの冬眠を、人間に応用できないかと研究している学者もいます。例えば、宇宙旅行の際に人間を冬眠状態にできれば、より遠い星の探査も可能になると考えられています。また、ケガや病気で寝たきりの状態の時も、冬眠状態であればエネルギーの損失を防ぎ、体力の消耗を抑えることができます。このように、クマの生態の研究で得られた成果が、さまざまな形で人間の生活にフィードバックされていくことでしょう。
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北海道大学 獣医学部 獣医学科 教授 坪田 敏男 先生
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