人間と野生動物の共存をめざして
日本と外国の野生動物に対する意識の違い
野生動物の研究分野において、日本は諸外国に比べ30年ほど遅れていると言われています。もともと日本人は農耕民族で、欧米は狩猟民族であるという違いもあるのでしょう。欧米人は、野生動物を獲物として見てきたので、動物がいなくなると食料がなくなり困る、という事情もあります。そうした必要に迫られた状況から生まれた学問が、動物保護管理学とも言えるのです。
絶滅が危惧される野生動物
日本にも相当数の野生動物はいますが、数が減ったものもいれば、増えたものもいます。トキやコウノトリ、ニホンカワウソは極端に数が減ったり、絶滅したとされています。また、長崎県の対馬周辺に生息するツシマヤマネコや、沖縄県八重山の西表島に生息するイリオモテヤマネコの数は、すでに100頭を切っています。その原因は、森林伐採や宅地の開発、農薬の使用などの影響が大きいとされ、今のところ地球温暖化による影響はわずかに過ぎないと考えられています。
北海道で増え続けるエゾシカ
一方、北海道のエゾシカは増え続けており、農作物の被害が深刻になっています。なぜ、これほど増えたのでしょうか。もともとエゾシカは、比較的生命力・繁殖力の強い動物ですが、理由はそれだけではありません。これは、1960~70年にかけて国が山の木を一斉に伐採し、そこに植林をしたことが影響しています。この切り開かれた跡地に太陽の光が入るようになり、次々に草原が生まれました。草食獣であるシカにとって、草原はえさ場になります。苦労せずともえさを手に入れることができる環境になったため、エゾシカの数は急激に増えたのです。
人間の活動が盛んになると、否が応でも野生動物に影響が出てきます。しかし、その生態を研究し、野生動物の数を管理・保全することで人間と野生動物の共存を図ることも、動物生態学の果たす大切な役割なのです。
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先生情報 / 大学情報
北海道大学 獣医学部 獣医学科 教授 坪田 敏男 先生
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