途上国で、トイレ・衛生への意識を変えるには?
世界にはトイレがない地域がまだまだある
日本に住んでいると、どこでも自由にトイレを使えるのが当たり前です。しかし開発途上国では、茂みや川などで排泄(はいせつ)を行っている人々が何億人もおり、都市部でも家にトイレがないことが珍しくありません。農村や漁村では人口が少ないので野外排泄も大きな問題になりませんが、都市は人口が密集しているため、トイレの問題が住環境の悪化や健康問題に直接つながります。そこで近年、さまざまな分野の日本人研究者と現地の研究者、青年団が協力し、「子どもクラブ」を設立して途上国の都市スラムへのトイレや衛生管理の仕組みの導入に取り組んでいます。
トイレ・衛生への意識変革は子どもから
トイレなどの衛生施設や管理のことを総称して「サニテーション」と言います。サニテーションの仕組みの導入にあたり大切なのは、「住民にトイレや衛生の重要性を自覚してもらうこと」です。住民の習慣や価値観に合わなければ、新しくトイレを作ってもいずれ使われなくなってしまうからです。
そこで着目されているのが、新たな習慣を柔軟に受け入れられる子どもたちです。まずは現地の子どもたちにトイレや衛生に関する調査やインタビューなどを行ってもらい、サニテーションへの意識を高めてもらいます。さらにその結果を地域で発表し、保護者や地域住民にもトイレや衛生について考えてもらうのです。
時間をかけて問題解決を
これは「アクションリサーチ」という手法です。外部の人間がトイレや衛生の大切さを一方的に押しつけるのではなく、地域の子どもたちが自ら現地調査を行い、その成果を地域社会に伝えるのが大きなポイントです。時間はかかりますが、この方法なら子どもから大人、地域社会の意識を徐々に変えていくことができます。さらに子どもたちが大人になり、自分が学んだことを次世代の子どもたちにも伝えていけば、世代を経るごとに地域のサニテーションを主体的に考える大人が増えるでしょう。サニテーションの問題解決をめざし、こうした地道な活動が続いています。
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北海道大学 医学部 保健学科 教授 山内 太郎 先生
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