講義No.11459 保健・福祉学

途上国で、トイレ・衛生への意識を変えるには?

途上国で、トイレ・衛生への意識を変えるには?

世界にはトイレがない地域がまだまだある

日本に住んでいると、どこでも自由にトイレを使えるのが当たり前です。しかし開発途上国では、茂みや川などで排泄(はいせつ)を行っている人々が何億人もおり、都市部でも家にトイレがないことが珍しくありません。農村や漁村では人口が少ないので野外排泄も大きな問題になりませんが、都市は人口が密集しているため、トイレの問題が住環境の悪化や健康問題に直接つながります。そこで近年、さまざまな分野の日本人研究者と現地の研究者、青年団が協力し、「子どもクラブ」を設立して途上国の都市スラムへのトイレや衛生管理の仕組みの導入に取り組んでいます。

トイレ・衛生への意識変革は子どもから

トイレなどの衛生施設や管理のことを総称して「サニテーション」と言います。サニテーションの仕組みの導入にあたり大切なのは、「住民にトイレや衛生の重要性を自覚してもらうこと」です。住民の習慣や価値観に合わなければ、新しくトイレを作ってもいずれ使われなくなってしまうからです。
そこで着目されているのが、新たな習慣を柔軟に受け入れられる子どもたちです。まずは現地の子どもたちにトイレや衛生に関する調査やインタビューなどを行ってもらい、サニテーションへの意識を高めてもらいます。さらにその結果を地域で発表し、保護者や地域住民にもトイレや衛生について考えてもらうのです。

時間をかけて問題解決を

これは「アクションリサーチ」という手法です。外部の人間がトイレや衛生の大切さを一方的に押しつけるのではなく、地域の子どもたちが自ら現地調査を行い、その成果を地域社会に伝えるのが大きなポイントです。時間はかかりますが、この方法なら子どもから大人、地域社会の意識を徐々に変えていくことができます。さらに子どもたちが大人になり、自分が学んだことを次世代の子どもたちにも伝えていけば、世代を経るごとに地域のサニテーションを主体的に考える大人が増えるでしょう。サニテーションの問題解決をめざし、こうした地道な活動が続いています。

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先生情報 / 大学情報

北海道大学 医学部 保健学科 教授 山内 太郎 先生

北海道大学 医学部 保健学科 教授 山内 太郎 先生

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国際保健学、人類生態学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校生のあなたには、ぜひ今のうちに「寝食を忘れて何かに熱中する」経験をしてほしいです。もちろん勉強や部活などで忙しいと思いますし、自由になるお金もあまりないかもしれません。それでもあなたは、大人と比べるとたくさんの時間と体力を持っています。その時間と体力を思いっきり使って、好きなことにのめり込めるのは高校生ならではの特権です。
周囲の人に理解されなくても気にせず、社会生活を逸脱しない範囲で熱中してください。もし、そこまで夢中になれるものが見つからなければ今のうちに探してみましょう。

先生への質問

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  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

北海道大学に関心を持ったあなたは

北海道大学は、学士号を授与する日本最初の大学である札幌農学校として1876年に創設されました。初代教頭のクラーク博士が札幌を去る際に学生に残した、「Boys, be ambitious!」は、日本の若者によく知られた言葉で本学のモットーでもあります。また、140余年の歴史の中で教育研究の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」、「実学の重視」を掲げ、現在、国際的な教育研究の拠点を目指して教職員・学生が一丸となって努力しています。