術後の工夫も重要な動物の整形外科
手術の後が大事
動物の整形外科では、手術だけでなく、手術後の取り組みも重要です。術後の管理によって治療の効果が大きく左右されるからです。例えば犬の生まれつきの肘関節脱臼の場合、脱臼した骨をつなげる外科手術を行うことがありますが、脱臼が再発する可能性が高いです。どうすれば再発を防ぎ手術の効果を最大化できるのか、術後の処置に注目した研究が行われています。その手法のひとつが、肘関節を支える装具を使うことです。
脱臼の再発を防ぐには?
生まれつき肘関節が脱臼していた珍しい症例に、手術後装具を使用した事例があります。術後に肘の骨が再び離れ始めたため、装具を使って肘を支えるのです。肘が伸びた姿勢のまま骨を一定の期間固定しておけば、離れやすい関節部分がうまく固まるはずです。装具を装着してしばらくすると、手術前には這って歩くことしかできなかった犬が走り回れるほど元気になりました。
先天性の肘関節脱臼のような珍しい症例は、治療法がまだ定まっていません。装具の有無による経過の違いなどを分析し客観的に効果を実証できれば、治療法の確立につながるでしょう。
動物の動きを正確に知る
現在、動物の動きが正常か異常かは目で見て判断することが主流です。しかし見た目だけでは治療が効果的なのかを判断するのは難しいです。経過を客観的に判断するためにも、基準となる健康な犬の動きを正確に知る必要があります。そこで健康な犬の歩き方を探る研究が進められています。センサーの付いた床を歩かせ、足にかかっている力やその方向などを計測します。この研究は欧米では飼育頭数の多い大型犬を対象に行われていました。
しかし日本で主流の小型犬についてはデータが不足しています。犬は体格差が大きく、足や骨の形も千差万別です。そのため歩き方にも犬種ごとに違いがあるかもしれません。まずはビーグル犬を対象に同様の実験が行われた結果、足にかかる力に大型犬と共通した特徴があることがわかってきました。ほかの犬種にはどのような特徴が見られるのか、さらなる研究が必要です。
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