国際的なトラブルはどこの国の法律で解決する?
人と人の国際的なトラブルを扱う法分野
国際取引や国際結婚など個人間の国際的な問題を扱う法分野を「国際私法」と言います。国によって法律が異なるので、例えば国際結婚をしようと思ったらどこの国の法律に則って手続きをするのか、外国企業との取引でトラブルが起こったらどちらの国の法律で裁くのかなどを考えるものです。
国際私法が扱うのは民法の範囲ですが、問題が起こったらまず、「どこの国の法律で問題を裁くのか」を決めなければなりません。どこの国の法律を適用するかという問題は民法の前段階を扱う法分野と言えます。
国際私法の歴史
国際私法の考え方は、地続きに国が並ぶヨーロッパで13世紀ごろから意識されていました。人とモノの移動が激しくなった中世の時期です。現在の国際私法の形ができたのは、19世紀後半と言われています。国際結婚や離婚など、家族にかかわる問題はそのころから考えられていました。日本で国際私法の概念ができたのは、近代国家へ歩み始めた明治時代のことです。
複数の解釈が存在する難しさ
1990年代から、日本では知的財産に関する国際的なトラブルが増えています。知的財産は、技術ノウハウなど国の利益と深く結びついているので、さまざまな国が足並みをそろえるのは非常に難しいことです。国際私法を使って民法の分野で考えるのではなく、国と国との条約で決めなければ治まらないこともあります。また、一つの法律で問題を裁いても判決の解釈は一つではありません。例えば、アメリカの裁判所が下した巨額の賠償金請求を受け入れるかどうか、日本の最高裁まで争ったケースがありました。一審では「受け入れは認めるが今回は認めない」、二審は「全面的に却下」、最高裁は「日本の公序(社会の人々が守るべき秩序)に反するため認めない」という判決で、裁判所によっても解釈が異なっていたのです。
近年では各国の足並みをそろえようと、モデルとなる共通ルールをつくる動きがアメリカやヨーロッパであり、日本でも研究者のグループで議論が交わされています。
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