国には国の法がある。では、国境を越えたトラブルはどう解決する?

国には国の法がある。では、国境を越えたトラブルはどう解決する?

国境を越えた取引トラブルの裁判とは

企業間の取引でトラブルが生じ、話し合いでも解決できない場合、最終的には裁判所で解決されることになります。日本の企業同士のトラブルであれば、日本の裁判所で日本の法に従って裁判されるでしょう。では、日本の会社とアメリカの会社といった、異なる国の企業間の場合はどうでしょうか。裁判するのは国連が作った裁判所、それとも、どこかの国の裁判所でしょうか。また、トラブルを解決するために使うのは条約、それとも、どこかの国の法でしょうか。

どの国で裁判するか

このような場合、国連が作った裁判所はないため、どこかの国の裁判所で裁判することになります。でも、日本や韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパ……どの国の裁判所で裁判できるか、すぐにはわからないでしょう。日本の企業であれば、日本で裁判したいと考えますが、外国の企業は自分の国で裁判したいと考えるでしょう。この問題を解決する特別な法と条約が、世界の国々に、そして日本にもあります。たくさんあるルールの中で1つだけ紹介すると、裁判は、訴えられる側の国ですべきだ、というルールがあります。訴えられる側が裁判の準備で不利にならないように、という公平を考えてのものです。

どの国の法を適用するか

どの国で裁判するかが決まったら、次はどの国の法を使うか、です。裁判をする国が、そのトラブルに関係する条約に加盟している場合、その条約が適用されることが多いです。例えば日本は、国際的な売買契約に関して国連が作った条約に加盟しています。もしもそういう条約がなかったら、そのときは、どこかの国の国内法を使って裁判することになります。でも、どの国の法になるか、これもまたすぐにはわからないでしょう。これについても、特別な法と条約があります。国際私法という名前なのですが、これによると、日本での裁判で、外国の法が選ばれることもあります。トラブル解決のために、「日本の裁判官が、日本法でなく、外国法を適用する!」この国際感覚のダイナミックさが、国際私法の魅力です。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

西南学院大学 法学部 国際関係法学科 教授 多田 望 先生

西南学院大学 法学部 国際関係法学科 教授 多田 望 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

国際関係法学、法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

法学部で学ぶ「法」は、すべて「言葉」からできています。ただ、法の「言葉」がほかの言葉と違うのは、それが「力を持っている」ということです。法が持つ「力」は、犯罪者を処罰したり、返されないお金を強制執行で貸主に取り戻したりして、国の秩序を作り、弱い立場の人を守る、そういう力。それを学ぶことは、自分の中にある正義の感覚と向き合うことになります。そうすることで、自分の将来やキャリア形成を自分で切り拓いていくことのできる学問、それが法学です。
ぜひあなたも西南学院大学法学部で、一緒に法の学びを始めませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

西南学院大学に関心を持ったあなたは

西南学院大学では、「Seinan, Be True to Christ」という創立者の遺訓を建学の精神として、時代のニーズに合った教育・研究を実践しています。また、1971年から交換留学制度を開設するなど、早くから国際交流に取り組み、世界で活躍できる人材を育成しています。2020年4月、外国語学部がスタートし、7学部12学科を擁する文系総合大学として、基本理念であるキリスト教教育に加え、時代を先取りした教育プログラム、先進の施設・設備によって21世紀の国際社会に相応しい人材育成を目指しています。