講義No.14984 法学

どこまで許される? 商標法と表現の自由

どこまで許される? 商標法と表現の自由

商標権ってどんなもの?

商標法は、企業やブランドのロゴやマークなど商品やサービス(役務)の出所を区別する表示を保護しています。例えば「夢ナビLIVE」も商標登録されています。
企業は、特許庁に出願して、問題がなければ、商標登録が認められ、商標権が発生します。最近では、文字や図形だけでなく「色彩のみからなる商標」や「音商標」など、新しいタイプの商標も認められるようになりました。
商標登録により、企業はその商標を類似する商品やサービスについて他の企業に使われることなく安心して自分で使えることになります。そして、消費者も、商標を頼りにして買いたい商品やサービスを見つけることができます。

一流ブランドとの「騒動」

以前「ルイ・ヴィトン」の日本法人が、アート作品「バッタもん」の展示中止を求めた騒動がありました。「バッタもん」は「ルイ・ヴィトン」のモノグラムを使い昆虫のバッタをかたどった立体作品でした。また、高級時計「フランク・ミュラー」のパロディと思われる「フランク三浦」の商標登録が裁判で争われたものもあります。
このように、商標権は、他の人の芸術活動や表現を制約するという側面があります。これは憲法で保障された「表現の自由」の問題でもあります。もちろん、有名な商品名を、他の企業が自分の商品に勝手に使うのは問題であり、そのような表現は規制されるべきです。他方で、芸術活動やパロディについて同じように考えてよいのかという問題があります。

使える言葉が少ない?

現在使用していない商標でも商標登録することができます。このため、企業は使う可能性のありそうなものを多数登録しています。以前の調査では、登録されている商標の半数以上が使用されていないとの結果が出たことがあります。最近では、多数の商標登録により、新たに商標として使える言葉の「枯渇」を指摘する声も出ています。新規参入する企業が適切な商標を使えるように、商標登録制度を考えていく必要があります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

福岡大学 法学部  准教授 平澤 卓人 先生

福岡大学法学部 准教授平澤 卓人 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

法学が何をやるのかは分かりにくいと思います。私も高校生のころはよく分かりませんでした。過去の先人の知恵を使いつつ、新たに起きる紛争や問題に取り組む、というのが1つの説明かもしれません。私の専門の知的財産法では、生成AIやメタバースでの問題について議論していきます。このような新たな問題について、過去の議論や判決の蓄積を生かしつつ、一貫性をもった適切な解決を探していきます。社会の様々な問題に関心をもって法学部に来てもらえるとうれしいです。

福岡大学に関心を持ったあなたは

福岡大学は、9学部31学科、在学生2万人を有する総合大学です。多くの学生や教職員が行き交う広大なキャンパスは福岡市の南西部に位置し、都心部との交通の便もよく、活気に満ちあふれています。「ワンキャンパス」に全学部が集結しており、総合大学の魅力を生かし、学問・研究および課外活動などにおいて学部間の交流が盛んに行われ、文系・理系だけにとどまらない幅広く多様な視野と知識を得ることが可能な大学です。また、創立から90周年で輩出した卒業生総数は28万人を超え、あらゆる分野で力を発揮しています。