海の境界紛争! 海底資源の安全なサプライチェーンの確保とは
海底資源の開発から輸送までの安全を守る
石油や天然ガスは、多くの国にとって貴重な資源です。そのため、海底の油ガス田をめぐって近隣国間で紛争が起きることは少なくありません。資源を有効利用するためには、まず海の「境界画定に関する紛争」を解決する必要があります。そこからさらに深海底を安全に掘削し、他国の領海を通航し、自国までの海路にあるさまざまな障害を取り除いてタンカーで運搬します。このように、資源の開発から輸送までの長い「サプライチェーン」を安全に構築する視点で課題を解決することが重要です。
紛争解決の普遍的な原則を探る
紛争解決に関する研究の手法は、主に文献調査です。国連の調査報告書や、紛争当事国が出した資料、裁判が行われたのであれば裁判の資料などを丹念に調べます。紛争には、当事者間の公平性の概念や、海底の地理などの自然の状況、その国の経済における海の重要性など、いろいろな要素が絡んでいます。文献からさまざまな事件を比較することで、そういった要素を抽出し、どのような要素によって客観的に境界が画定されるのか、普遍的な原則を探究します。境界画定の紛争解決には、法律論や政治論だけではなく、地質学や深海底開発のテクノロジー、船のオペレーションなど多方面からのアプローチが必要なのです。
紛争地域の安定化をめざして
一方で、紛争の原因ともなる資源のパイプラインを当事国の間に通すことで、地域の安定化を図る「ピースパイプライン」という概念が注目されています。パイプラインの開発によってその周辺国は雇用の創出や投資の受け入れができ、また開発や資源利用の交渉の過程で対立していた国が和解に向かう可能性もあると期待されています。実際の例として、トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン、インドを通る「TAPIパイプライン」が注目されています。
これらの研究を踏まえて、そもそも国の資源開発権はどこから生じるのかという根本的な問いの解明も目標とされています。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋生命科学部 海洋政策文化学科 准教授 大河内 美香 先生
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