国が違えば法律も違う―国際私法の役割とは?

国が違えば法律も違う―国際私法の役割とは?

どこの国の法律で決めるの?

経済のグローバル化で、外国との距離は急速に縮まりました。しかし外国の人と接する機会が増えるにつれ、トラブルも多くなり、「国際私法」が活躍する場が増えています。国際私法とは、国際取引や国際結婚など個人間の国際的な問題を扱う法分野です。
これまで日本の法律関係は、国内に住む日本人同士が関わることがほとんどで、国の違いが意識されることはそれほどありませんでした。ところがグローバル化によるトラブルの増加にともなって、日本法で解決するのか、外国法で解決するのかを選ぶ場面が増えてきました。問題を解決するためには、まずはどこの国の法律で考えるかを決めなければなりません。

他国の裁判所が出した判決にしたがうべき?

例えば、日本に住む日本人学生が追突事故を起こし、相手がアメリカ人だったとします。日本の法律に則ってケガの治療費や賠償金を決めてよいのか、またはアメリカ人が自国の裁判所で多額の賠償金を求める訴えを起こし、正当と認める判決が下ったら、日本人学生は要求どおりの額の賠償金を支払う義務があるのかというケースです。ここで問題となるのは、国により法の適用範囲や法律そのものが異なることです。どこの国の法律を使うかで関係者の利害は大きく変わってきます。また外国の判決を無制限に受け入れてしまうと、日本の法律に意味がなくなってしまいます。

増え続ける国際私法の出番

他国の判決を受け入れるには、相手国の裁判所を信頼することが前提です。相手国も日本と同じような裁判をやってくれると信頼して裁判を任せ、判決を受け入れるのです。
今後、国際私法が必要になる機会はますます増えていくでしょう。国によって異なる法律の足並をそろえるため、研究者の間で国際的な共通ルールに関する議論も盛んに行われています。しかし日本の国際私法の研究者数はヨーロッパなどに比べて少ないため、このままでは世界で交わされる議論から日本が置いていかれる危険性があります。一人でも多くの次世代の研究者の誕生が待たれているのです。

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名古屋大学 法学部  教授 横溝 大 先生

名古屋大学 法学部 教授 横溝 大 先生

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法学、国際私法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

国際私法が必要になる機会は、今後ますます増えていくでしょう。国際私法は実務面からみても理論面からみても興味深い分野です。外国の法や言語・文化の違いも理解しなければならず、変化のスピードが速い面もありますが、非常にやりがいがあります。外国法の適用や外国判決の承認・執行を扱うため「そもそもなぜそんなことをするのか」「法とは何か」を考えさせられる哲学的な分野でもあるのです。法学を志すなら、将来的には当然知らなければならない分野になると思いますので、ぜひ積極的に国際私法に触れてみてください。

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。