講義No.03688 生物学 理工系その他 水産学

ハイテク機器を駆使して動物の生態を追う

ハイテク機器を駆使して動物の生態を追う

動物の暮らしを24時間見てみたい

動物行動学では生き物の行動を観察し、記録・分析します。昔は人間が観察できない時間や場所での動物の行動はわかりませんでした。例えば地面にいるアリ1匹を目で追ってみてください。石の間に入ったり、巣穴にもぐったりするとたちまち見失ってしまうので、人間が観察していられるのは、ごくわずかな時間です。私たちの見えないところで、動物たちは何をしているのか、この素朴な疑問に挑むのが、「バイオロギング」を使った動物行動学の研究です。
バイオロギングとはセンサーやGPS、ビデオカメラなどのハイテク機器を動物につけて、動物の行動や目にしている世界を記録しようという手法です。

ゾウアザラシが海に潜れる深さは?

バイオロギングの歴史は1970年ごろ行われた、海洋動物の行動調査で幕を開けました。水圧センサーをつけることで、ゾウアザラシが水深1000mも海に潜れることや、ペンギンが水深500mくらいの深さまで1日に何度も潜ることなどが明らかになりました。
その後もさまざまなセンサーが開発され、海洋動物だけではなく陸上動物、近年では小鳥や昆虫などにもつけられる小型センサーが登場し、その行動を記録できるようになったのです。また位置を調べるGPSや動物の目に映る世界を記録するビデオカメラの性能も上がりました。今後もハイテク機器が発達するにつれ、より多くの動物の生態が解明されるでしょう。

生物多様性を守るための指標

動物と人間のかかわりは、3つの視点で考えられます。人間側から見る視点、動物側から見る視点、データで客観的に見る視点です。これら3つの視点で動物を眺めれば、彼らが自然環境の中でより生き生きと暮らすための提案ができるはずです。
絶滅寸前の動物を保護するとき、繁殖地を守るだけでは不十分です。エサ場やそこにたどり着くまでの経路も守らなければ、本当の意味での保護とは言えません。バイオロギングで集めたデータは、このようなときにも重要な指標になるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 理学部 地球惑星科学科 教授 依田 憲 先生

名古屋大学 理学部 地球惑星科学科 教授 依田 憲 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

動物行動学

メッセージ

動物にセンサーをとりつけて動物の追跡調査を行うと言えばハイテクに思うかもしれませんが、実はとてつもなく体を使う作業です。ときには泥だらけ、フンだらけになることもあります。それでも動物たちはどこで何をしているのか、動物のことをもっと知りたいという好奇心で研究を続けているのです。
動物行動学は現場に行く楽しさ、生き物の多様さを感じることができる面白い分野です。高校生のあなたは生まれたときからハイテク機器と接していますから、新しい発想を持ち込んでくれると期待しています。

先生への質問

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名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。