ハイテク機器を駆使して動物の生態を追う
動物の暮らしを24時間見てみたい
動物行動学では生き物の行動を観察し、記録・分析します。昔は人間が観察できない時間や場所での動物の行動はわかりませんでした。例えば地面にいるアリ1匹を目で追ってみてください。石の間に入ったり、巣穴にもぐったりするとたちまち見失ってしまうので、人間が観察していられるのは、ごくわずかな時間です。私たちの見えないところで、動物たちは何をしているのか、この素朴な疑問に挑むのが、「バイオロギング」を使った動物行動学の研究です。
バイオロギングとはセンサーやGPS、ビデオカメラなどのハイテク機器を動物につけて、動物の行動や目にしている世界を記録しようという手法です。
ゾウアザラシが海に潜れる深さは?
バイオロギングの歴史は1970年ごろ行われた、海洋動物の行動調査で幕を開けました。水圧センサーをつけることで、ゾウアザラシが水深1000mも海に潜れることや、ペンギンが水深500mくらいの深さまで1日に何度も潜ることなどが明らかになりました。
その後もさまざまなセンサーが開発され、海洋動物だけではなく陸上動物、近年では小鳥や昆虫などにもつけられる小型センサーが登場し、その行動を記録できるようになったのです。また位置を調べるGPSや動物の目に映る世界を記録するビデオカメラの性能も上がりました。今後もハイテク機器が発達するにつれ、より多くの動物の生態が解明されるでしょう。
生物多様性を守るための指標
動物と人間のかかわりは、3つの視点で考えられます。人間側から見る視点、動物側から見る視点、データで客観的に見る視点です。これら3つの視点で動物を眺めれば、彼らが自然環境の中でより生き生きと暮らすための提案ができるはずです。
絶滅寸前の動物を保護するとき、繁殖地を守るだけでは不十分です。エサ場やそこにたどり着くまでの経路も守らなければ、本当の意味での保護とは言えません。バイオロギングで集めたデータは、このようなときにも重要な指標になるのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 理学部 地球惑星科学科 教授 依田 憲 先生
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動物行動学先生への質問
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