単分子磁石:記憶する分子
先端技術開発に貢献する化学
身の回りには役に立っている化学物質がたくさんあります。計算機、ロボット、あるいは食品、医薬品、さらにはヒトを含めた生物までもが、広い意味で化学物質からなっています。ありがたみに気づかないくらいに生活に溶け込んでいます。もっともっとありがたい機能性材料を創っていければ、よりよい暮らし、より高度な文明社会、資源や環境に配慮した産業と経済の発展を進めることができます。化学は理工系の基盤学問、産業ですから、そこに大きく寄与します。
化合物としての磁石
日本の化学産業が国際競争力を維持していくためには、エレクトロニクス材料や新薬など、小さくて付加価値の高い製品に特化することが必要です。日本の得意分野のひとつに、磁石の開発があります。磁石と言うと、馬蹄形磁石や砂鉄をイメージするかもしれませんが、近年は、試験管内で合成できる有機化合物主体の磁石が開発されています。
一般的な有機化合物は磁性を持つことはありませんが、分子や結晶設計により磁気を持たせることが可能で、この研究が進めば、「溶ける」「曲がる」「光を通す」そして「食べられる」といった、まったく新しい概念の磁石が作れるかもしれません。そうなると、磁石の用途もさまざまな分野に広がります。例えば、投薬治療において、あらかじめ患者の患部に磁場を作っておき、超小型の磁石をつけた薬を服用すれば、磁場により患部に集中的に投薬できるといったことも考えられるでしょう。そのような超小型の磁石開発は、情報記録媒体の小型化に有効と考えられ、電子材料におけるナノテクノロジーの一環とも位置付けられます。
記憶する分子
記憶することのできる分子というのはありえるのでしょうか。脳ミソを持っているわけでもないのに変ですよね。分子は誰が作ったって同じものなのだから、ちがう状態にとどめておくなんてありえない、というのが常識です。しかし常識を覆すのが大学の研究、それは今では可能なこととなっています。
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