高速道路で急に渋滞が始まるのはなぜ? 「相転移」を解明せよ!
ある瞬間に性質がガラッと変わる「相転移」
温度や密度、磁場の変化などがある数値を越えた瞬間に、物の性質や状態が全く違う性質になる現象を「相転移」と言います。例えば、物質の中の電子は小さな磁石の性質を持っており、同じ方向を向く相互作用を持つと、その物質は磁石になります。それは温度と関係していて、温度が高いとバラバラの方向を向きます。ですから、磁石を火にくべると、相転移を起こして磁石の性質は消えてしまいます。
高速道路などで、それまで順調に進んでいたのに急に渋滞が始まったり、逆に急に渋滞が解消したりしますが、これも「相転移」と考えられます。車の渋滞の場合、前の車に近づきすぎればブレーキを踏む、離れていればアクセルを踏む、という前後の車の相互作用により、車の数が一定の密度になると、ある瞬間から渋滞になるのです。
物事の解明はモデルづくりから
相転移の現象を理論的に解明するためには、まずモデルをつくります。例えば、渋滞であれば車と車の間隔が何メートルになったら流れが止まるのか、バネや磁石でモデルをつくり、そのモデルから数式をつくって、それを解いていきます。これは微分方程式のような式なのですが、とても複雑で簡単に解くことはできません。
例えば、空から落ちてくる雨粒は、自然落下のままのスピードで落ちてきたら頭を突き抜けるほどの速さになりますが、実際には空気抵抗や風など、さまざまな条件が加わります。これをモデル化して数式をつくり、それを解くことで、天気予報に役立てられています。
コンピュータで解析し、物理現象を解明
物理学では、「なぜこういうことが起きるのか」ということを、モデルをつくりそれを解くことで理解していきます。そうやって物の本質を追究していくと、物理現象は普遍的な性質を持っていることがわかってきます。数式をコンピュータで解く際には、どんなプログラムを組めばより解きやすくなるかなどを考える過程で、コンピュータの効率的な使い方も学ぶことができます。
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先生情報 / 大学情報
東北文化学園大学 工学部 知能情報システム学科 教授 鈴木 伸夫 先生
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