「70マイクロメートル走」でわかってきた微生物の動き
微生物の動き方に次々と新発見!
顕微鏡でしか見られない微生物の中には、病気を引き起こしたり、発酵食品を作ったりするものがいて、その「働き」が解明されてきました。しかし、その「生態」や「動き方」についてはほとんどわかっていないため、研究が進められています。
例えば、細菌には1つの細胞に尻尾のような「べん毛」が1本~数本生えているものや、たくさんの「線毛」がついたものがあり、それらを動かして移動すると考えられていました。しかし、最新の光学顕微鏡で、種類によっては、べん毛を体に巻き付けたり、線毛をスパイダーマンのように伸び縮みさせたりして動くものが観察されました。
「微生物オリンピック」?
微生物研究における試験管など実験の環境と、本来細菌が住む人体の中などの環境は全く異なります。そこで、普段の環境を再現した実験が行われました。微細加工技術で何本もの細長いレーンを作り、その1本に1種類ずつ細菌を閉じ込めて「70マイクロメートル走」をさせるのです。この「微生物オリンピック」により、動くスピードや動き方が細菌によって異なることがわかりました。例えば、病気を引き起こすカンピロバクターという細菌が、この細長いレーンではべん毛を体に巻き付けて素早く進む姿が観察されました。人間の体内でもこのような動きをしているだろうと考えられます。
この微生物オリンピックの装置は、微生物の種類を見分けるデバイスに発展する可能性もあります。
「微生物行動学」に発展するかも!
「どう動くか」が解明されてくると、「なぜそう動くのか」という疑問が湧いてきます。おそらく、同じ微生物といっても、それぞれの生存戦略に基づいて動きが違っているのだろうと考えられます。
動物の生態や行動の理由を解き明かす「動物行動学」という学問があります。微生物の動きやその理由の研究が、「微生物行動学」という新しい学問に発展するかもしれません。そうすれば、病原体の感染予防や微生物の活用にも貢献すると期待が高まります。
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