暗号技術を活用して安全な情報社会を作ろう!

暗号技術を活用して安全な情報社会を作ろう!

守護神現る!

日本では、ICOCAやSuicaといった非接触型ICカードを使った安全性の高い交通システムが比較的早い段階で社会実装されています。非接触型ICカードに使用されている「共通鍵暗号」は、当初はDES暗号でしたが、現在はより安全性の高いAES暗号へと移行されています。このAES暗号は、2001年に世界標準となったもので、設計したのはベルギーのKU Leuven大学の研究者です。シンプルな計算で高い安全性を実現できるため、ほとんどの情報セキュリティシステムで採用されています。いわば情報社会の守護神的存在です。

半導体チップの指紋

スマホのロックを解除するときに使う指紋認証や顔認証といったバイオメトリクス技術は、パスワードのように忘れることがなく、入力の手間が省けるといった長所がある一方で、偽造される心配があります。カメラが高性能化した現在では、写真を撮るだけで指や目のコピーもできてしまいます。そこで、パスワードとバイオメトリクスのいいとこ取りを実現する物理指紋、人工物の指紋が注目されています。半導体チップには、指紋と同じく、一つひとつ異なる電気的な特徴があります。偽造のリスクも低く、セキュリティ製品への応用が進められています。

理論と現実のギャップ

理論上どんなに安全でも、実際にモノを作るとセキュリティホールができてしまいます。というのも、安全性に関する理論を構築する際に、時間や温度といった物理パラメータはセキュリティの文脈で定式化しにくいからです。理想と現実のギャップを埋めるには、理論研究者と応用研究者が共通の言葉で会話することが不可欠です。また、安全性が高くなるほど利便性は落ちてしまいがちです。例えば、二段階認証はパスワード認証に比べはるかに安全ですが、メールやSNSで受け取った別のパスコードを入力するなど、余計な手間がかかってしまいます。理論的安全性と実世界での利便性の両取りをめざす。セキュリティ研究者の矜持はここにあります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) セキュリティ情報学プログラム 教授 﨑山 一男 先生

電気通信大学 情報理工学域 II類(融合系) セキュリティ情報学プログラム 教授 﨑山 一男 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

情報学、暗号学

先生が目指すSDGs

メッセージ

世界は広い。チャンスがあったら海外の空気に触れ、ぜひ異文化を肌で感じてください。価値観や考え方の違いから、意見が衝突し、侃侃諤諤の議論になることは日常茶飯事ですが、それでもちゃんとコンセンサスに至ります。これこそが「モノづくり」の基本であり、混乱の中から何かが生まれる醍醐味といえます。
そもそも、セキュリティ製品はこういった人と人のつながりをコントロールする利器と考えられます。単なる利便性や安全性を求めるだけのものではなく、日々の生活に欠かせない暮らしの道具であることに気づいてもらいたいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

電気通信大学に関心を持ったあなたは

電気通信大学は、東京にある理工系国立大学で、「工学」と「理学」のうち、特に情報分野および理工分野を核とした教育研究を行っています。先端科学技術を支える全分野、例えば、情報、通信、電子、知能機械、ロボティクス、光科学、物理、量子、化学、物質、生命などの分野を網羅しています。社会で活躍する人材の育成をめざし、ものづくりに意欲を燃やす学生の期待に応える教育環境を提供します。