ナノサイズの磁石の不思議な世界

ナノサイズの磁石の不思議な世界

ナノサイズの磁石の粒子

磁石の性質があるものにはS極とN極があり、同極同士では反発して、S極とN極でくっつきます。それがナノサイズの世界では、S極とN極にキレイに分かれることなく、磁性をもつ粒子がクルクルと動いています。これを量子スピンといい、まだ不可解な点が多い分野です。量子とは、粒子と波の性質をもつ、ナノサイズ以下の小さな物質のことです。量子コンピュータや量子センサなどに活用する量子技術が今、急速に発展しています。

ナノ世界の特性を解明

原子は、原子核と電子で構成されています。電子の構成を調べると、その物質に磁石の性質があるかどうかがわかります。
ナノサイズの物質の特性を調べるには、安定した状態を作り出すことが重要です。銅イオンやニッケルイオンといった、1つの原子からなる単イオンに有機物を合成して安定させて、磁性の性質を検証します。単イオンのまわりに分子を配置する方法と、ジャングルジムのような立体的な分子に単イオンを配置する方法を組み合わせると、安定して詳細な性質を検証できます。化学と物理学の双方を活用して検証するのです。

次世代技術の礎に

さらに調査すると、「量子ビット」という現象をもつ物質があることがわかります。量子ビットとは、複数の重ね合わせの状態のことをいいます。現在のコンピュータは0と1の2ビットですが、量子ビットは0と1が重なって「1であり、0でもある」状態となるため、それを用いる量子コンピュータは高速な計算や処置が可能です。ただし量子ビットは不安定で、相互作用などによってスピードやスピンが変化します。安定的に量子技術に活用するにはどのような作用が相応しいのか、検証することが求められています。
近年では電子スピンの性質を工学的に利用する技術、「スピントロニクス」への注目も高まっています。これは、電気と磁気の両方を活用する未来型のエレクトロニクスです。個々の物質のナノサイズの世界で何が起きているのか解明することが、未来の技術につながります。

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先生情報 / 大学情報

公立千歳科学技術大学 理工学部 応用化学生物学科 准教授 脇坂 聖憲 先生

公立千歳科学技術大学 理工学部 応用化学生物学科 准教授 脇坂 聖憲 先生

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ナノマテリアル、量子マテリアル

メッセージ

私は、高校の時まで「化学や物理はつまらない」と思っていました。でも大学では、学ぶ内容ががらりと変わります。例えば、物質の色を決めているのは電子であるというように、物質や電子、波の性質がわかると、ものを見る時の印象が変わっておもしろくなりました。大学ではいろいろな学びができますが、国語と英語は今のうちにしっかり学んでおきましょう。レポートを書くといった文章力、英語の論文を読む力は不可欠です。そしてナノ世界に興味があるなら、ぜひ一緒に探究しましょう。

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公立大学へ移行した本学は「科技大」と呼ばれ、緑に囲まれた雄大なキャンパスに応用化学生物学科、電子光工学科、情報システム工学科の理工学部3学科の学生たちが学んでいます。理工学部では理工学を9つの領域に分類し、1年次に9つの分野を幅広く学び基礎を身につけて、2年次から選択した学科で専門的に学修するというように、より高度な学びへと進む着実なカリキュラムを組んでいます。ですから、エンジニアとしての即戦力が強みとなり、就職に強い大学としても一定の評価を受けております。