見えないものが見えるようになると、新しい可能性が生まれる
見えなかったイオンの動きが見えると
世の中には目に見えないものがたくさん存在しています。イオンの動きもそのひとつです。イオンとは電解質のことで、自動車燃料として注目されている水素イオンのほか、植物や生物、人体の中の細胞の動きにも関わっています。これまでは数値として計っていたイオンが、「イオンイメージセンサ」によって動きとして画像で見られるようになると、どうなるのでしょう。
例えば、歯を定期的にセンサでチェックすれば、虫歯予防に役立つようになります。また、体内のカリウムやナトリウムなどのイオンの動きを観察することも可能です。脳内のシナプスの伝達物質が、投薬によってどう変化するのかを画像でリアルタイムに見ることもでき、アルツハイマーなどの病気の治療や新薬の開発に役立てることができるでしょう。
電気・電子工学と化学の融合によって生まれた技術
「イオンイメージセンサ」は、バイオセンサ技術とイメージセンサ技術を融合させ、さらにCCD(電荷転送)技術を加えて誕生した新しい技術です。イオンの信号を電子量に変換することで目に見える画像にしていて、電気・電子工学だけでなく化学の分野にも非常に重要な役割を果たしています。医学のほか、生物学や農学の分野にも活用できます。植物の窒素やリンなどの動きを見ることができれば、植物と会話ができるかもしれません。土壌や根の状態を把握できると、その植物の育成に経験豊富な農家の勘が頼りであった農業を誰もができるようになるかもしれないのです。
新しい研究・発見が新しい社会ニーズを掘り起こす
新しい研究で成果が挙がると、新しいニーズが生まれます。イオンの動きを可視化する意義は未知数でしたが、生命科学に関わる分野に生かせることがわかり、関心が高まっています。
現在は、細胞1個分30ミクロン程度の画像ですが、近い将来、神経細胞の1~2ミクロンが見られるようになるでしょう。そうなれば、医療や生物学分野における新しい発見につながる可能性が生まれてくるはずです。
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豊橋技術科学大学 工学部 電気・電子情報工学系 教授 澤田 和明 先生
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