病気の原因を解き明かし、医学の新たな扉を開く「基礎研究医」
ほとんどの病気の原因はまだわかっていない
ヒトがかかる病気の原因は、実はまだあまりわかっていません。例えば高血圧は、心臓や血管の問題、ストレスなど複数の原因をもつ多因子疾患ですが、その人の病態にどの因子が最も関与しているのか突き止めるのは困難です。しかし、ヒトのどの遺伝子に異常があればどんな病気になるのかを研究して解明できれば、遺伝子変異と病気は1対1の対応になるため、原因がはっきりします。すると病気になるメカニズムも明らかになり、創薬の標的を定めることができます。
「自己炎症性疾患」は新しい概念の免疫疾患
ヒトの免疫システムには、抗原が体に入ったときにすぐに免疫細胞が抗体を作り攻撃する「自然免疫」と、免疫細胞が多種にわたる抗原を記憶していて、2回目に相手に出会うと効果的に攻撃することができる「獲得免疫」の2種類があります。
獲得免疫が異常に活動し、自分自身の細胞を敵とみなして攻撃してしまう膠原(こうげん)病・関節リウマチなどの「自己免疫疾患」は以前から知られていましたが、自然免疫の異常によって起こる「自己炎症性疾患」は、1999年に存在が明らかになった新しい病気の概念です。自然免疫が過剰に活性化して勝手に炎症のスイッチが入る自己炎症性疾患の治療法の開発が求められています。
病気のメカニズムを解明する基礎研究医
しかし、近年の基礎研究で、特定の細菌に対してセンサーの役目をする免疫細胞の受容体に遺伝子異常がある場合、ひとりでに自己免疫が活性化し続けてしまい、炎症を引き起こすことがわかりました。また従来、自己免疫疾患とされてきた若年性関節リウマチは、現在は自己炎症性疾患と考えられています。
今までわからなかった病気のメカニズムを解明できれば、病気の概念が変わり、新たな治療法の開発にもつながります。医学はいわばヒトの生物学です。病気の原因を高度で幅広い領域の知見で追究し、新しい医学の進歩に役立てる重要な役割を担っているのが基礎研究医なのです。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 医学部 医学科 生体防御医学分野 教授 安友 康二 先生
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