ミクロな細胞の機能を研究する! ~細胞研究の最前線~
細胞間の相互作用
細胞は相互に連関しながら機能を果たしています。例えば、脳の中に無数にある神経細胞は、1つひとつがコンタクトをとりあって人間の記憶や学習を支えています。神経細胞にある1本の長い突起がニョキニョキと伸びてほかの神経細胞につながり、情報伝達をし合うことで神経回路を形成しているのです。また上皮細胞は、複数の細胞が接着して集団を形成し、その集団単位で動くという機能を持っています。これは「集団的細胞運動」と呼ばれ、組織や器官ができるときに使われる運動様式であり、がんが広がり、転移する際にも見られる動きです。
細胞内の交通状況
細胞内にはタンパク質や脂質などさまざまな物質がありますが、それぞれのはたらく場所が決められており、細胞内で、正しいときに正しい場所へと運ばれていきます。A地点からB地点に直接運ぶ場合や、細胞内小器官と呼ばれる中継地点を経由し、そこで仕分けした後に次の目的地へ運ぶといった動きもあります。こうした「細胞内小胞輸送」の研究が、2013年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。バスや電車が人を乗せ、トラックが荷物を積んで運ぶかのような、複雑な動きを制御するものには「Rabファミリー低分子量Gタンパク質」などがあり、哺乳動物で70種類以上みつかっていますが、それらの役割は十分に解明されてはいません。
異分野との連携
細胞のはたらきについての研究をするには、分子生物学や生化学、細胞生物学といったいろいろな学問分野が必要です。それぞれが密接に結び付いて、医学と生物学の領域にまたがるさまざまな生理・病理現象の謎を解き明かします。また、新たな発見を行うために、バイオインフォマティクスや画像解析、バイオメカニクスといった異分野の学問との連携も盛んに行っており、近年では光学分野との連携も進められています。
分子生物学や生化学、細胞生物学が明らかにしてきたシーズ(種)を、目覚ましい進歩を続ける光技術と組み合わせることで、これまで誰も見たことのない発見がなされるかもしれません。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
徳島大学 医学部 医学科 生化学分野 准教授 坂根 亜由子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
分子生物学、生化学、細胞生物学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?