テラヘルツ波で大量&超高速な通信をめざせ!

テラヘルツ波で大量&超高速な通信をめざせ!

「光と電波の間」開拓が進むテラヘルツ波

「電磁波」は、周波数が高いほうから順にX線、光、電波などと呼び名が変わります。X線、光、電波は、私たちの身の回りでさまざまな目的で使われていますが、現在よく通信などに使われている周波数の「電波」と「光」の領域の間にある、数テラヘルツ(THz)の周波数を持った電磁波「テラヘルツ波」は、これまであまり利用されてきませんでした。
テラヘルツ波は「光」と「電波」の特徴を併せ持っています。物を透過する性質を利用してボディスキャナーや非破壊検査に使ったり、物質に照射して反射や吸収の状態を分析する「分光」という方法でものの性質を見分けたりもできます。しかし、インターネットの通信量が増大している近年、最も注目されているのは大量のデータを高速で運べるという特徴です。

テラヘルツ波を扱う技術の研究

今進んでいる5G(第五世代)通信で使用するのは、周波数28GHz(ギガヘルツ)程度までの電波なので、テラヘルツという高い周波数(1THz=1000GHz)を扱うには、新しい技術が必要です。テラヘルツ波を発生させるにはこれまで大がかりな装置が必要でしたが、最近、1ミリ以下のチップでテラヘルツ波の元となる光を生み出せる「マイクロ光コム」という技術が開発されました。
このチップにレーザーを当てると複数の異なる周波数の光が生成され、その周波数の差がちょうどテラヘルツになることから、この光を使ってテラヘルツ波を発生できるという仕組みです。このテラヘルツ波を使って無線通信ができることも実証しました。

高速・大容量の通信で遠隔診療を支援

テラヘルツ波を扱う技術の革新によって期待されている分野の一つが、遠隔診療です。遠隔で診断や手術を行う際には、患部を撮影した高解像度の画像データや動画データを、大量に安定的に通信する必要があります。テラヘルツ波を利用した通信技術が確立すれば、医療機関が整っていない地方の患者でも、家にいながら都市部の最先端の医療を受けることも可能になるのです。

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徳島大学 理工学部 理工学科 医光/医工融合プログラム 講師 時実 悠 先生

徳島大学 理工学部 理工学科 医光/医工融合プログラム 講師 時実 悠 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

光工学、通信工学、応用物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

遠隔診療では、診断する「目」となる画像が大切で、それを支える技術が光学です。医療機器の開発にたどり着くためには、光の知識だけでなく、電磁気学、数学など、光学以外の知識も必要で、高校生で学ぶ基礎的な数学・物理をきっちりやるのが大事なことです。画期的な「応用」にはしっかりした「基礎」が大切なので、不得意な科目もがんばってください。また、大学に入ってから「実はこれは得意だった」と気づくことも多いので、得意・不得意を気にしすぎて可能性を狭めないほうがいいと思います。

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