血液型はなぜあるのか
血液型を決めるのは?
人間の身体は約30兆個の細胞でつくられており、それぞれの細胞の表面には「糖鎖(とうさ)」と呼ばれる鎖が生えています。糖鎖とは、ブドウ糖などの糖が鎖状につながった化合物です。
血液型は、赤血球の表面にある糖鎖の違いで判定します。O型の人は、3個の糖がつながった糖鎖を持っています。A型の人はO型の3個の糖に加えてA型になる糖を1個持っていて、B型の人はO型の糖に加えB型になる糖を1個持っています。つまりA型、B型のもとになっているのはO型です。AB型はA型とB型の糖鎖をそれぞれ持っています。
糖鎖がウイルスの蔓延を防ぐ?
ところで、なぜ血液型が存在するのでしょうか。21世紀になってからウイルスの蔓延を防ぐためという説が発表されました。ウイルスは細胞外に出るときに細胞表面の構造をまとうのですが、これには各血液型の特徴が刻まれています。それがまた別の身体に侵入すると、異なる血液型の構造がウイルスと一緒に身体に入ってくることになり、抗体(生体が抗原の進入に反応して体内に形成する物質)が集中攻撃するので感染しにくいというのです。血液型の存在は、種の絶滅を回避するためのリスクヘッジになっているというわけです。
ポストゲノムの研究課題
糖鎖は生命を維持していくための細胞間の相互作用や、細胞と抗体の相互作用において重要な働きを担っています。さまざまな情報を細胞に知らせるセンサーの役目をしているのです。近年、細菌やウイルスなど異物の認識だけではなく、ホルモンバランスの調整、免疫など、私たちの健康に糖鎖が大きな影響をおよぼすことがわかってきました。糖鎖の構造は非常に複雑なのですが、構造を特定し、それを化学的に合成して、どのような機能を持っているのかを検証しようと世界中で研究が進んでいます。ヒトゲノム(ヒトの持つ全遺伝情報)の解読が2003年に終わりましたが、それ以降の重要な研究テーマとして注目されているのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 理学部 化学科 教授 深瀬 浩一 先生
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