「イムノバイオティクス」の研究で、ヒトもブタも健康に

「イムノバイオティクス」の研究で、ヒトもブタも健康に

乳酸菌を健康に生かす最新の研究分野

私たちの腸内には多種多様な腸内細菌がすんでいますが、その中でも乳酸菌やビフィズス菌と健康との関係についての研究は、かなり昔から続けられてきました。これまでは、乳酸菌を多く含む食品をとり、健康効果を狙う「プロバイオティクス」、菌のエサとなるオリゴ糖などをたくさんとることで増殖を促す「プレバイオティクス」、その2つを合わせた「シンバイオティクス」という3種類の研究が主流でした。そして近年、新たに注目されているのが、免疫機能に関わっている乳酸菌を対象とした「イムノバイオティクス」の研究です。

ブタを使った研究がブタからヒトの健康に結びつく

免疫機能に関わる乳酸菌が有する「イムノジェニックス」という因子が、腸管免疫系に働きかけるという、大まかなメカニズムまではわかっています。ただ、それを実験室内の研究だけで具体的に証明するのは困難です。そこで現在、ブタを使った研究が進められているのですが、それが奇しくも、ブタのみならずヒトの健康を守る研究にも発展しています。ブタの畜産現場では、病気を予防するために抗生剤などが入ったエサを与えているのですが、イムノバイオティクスの研究を通じて、病気になりにくいブタの生産技術が生まれ、その研究がヒトにも役立つのです。

産廃も減らせて健康も守れる一石三鳥の研究

宮城県は海藻の大産地です。ただ、ワカメなどは葉の部分だけを食べるため、茎の一部や根の部分は廃棄されています。そこで、ブタの腸から採取した免疫機能を高める乳酸菌の中から、ワカメの成分を好む種を選び出し、ワカメの茎や根を飼料にしながら菌を増やす研究がスタートしました。シンバイオティクスの手法でイムノバイオティクスの効果を高めるわけです。
人々の健康を守るための研究が安全な畜産業の研究を生みだし、産業廃棄物を有効活用でき、抗生剤入り飼料を使わずに育った豚肉を食べることで人々の健康も守れるという、「一石三鳥」の結果が生まれようとしているのです。

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先生情報 / 大学情報

東北大学 農学部 生物生産科学科 応用動物科学コース(動物資源化学分野) 教授 北澤 春樹 先生

東北大学 農学部 生物生産科学科 応用動物科学コース(動物資源化学分野) 教授 北澤 春樹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

食品・飼料免疫学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたは身近な物事に対して、「これはなんだろう、なぜこうなるのだろう」などと疑問に感じ、調べずにはいられないといった気持ちになった経験はありますか? 科学の研究は疑問から始まります。いろいろな「なんだろう、なぜだろう」を追究し、得られた知識や経験が、あなたを科学の入り口に導いてくれるはずです。
私自身、子どもの頃に興味が湧いたことを、もっと調べておけばよかった、もっと観察しておけばよかったと、今でも後悔することがあるくらいです。大発見の「種」は、あなたの身近なところにたくさんあるはずです。

先生への質問

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建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。