駅伝に求められる「個の強さ」とチームづくり
限られた情報をどう生かすか
トラック競技は競技場内のアナウンスや電光掲示板のモニターなど、周囲から得られる情報をレースプランに生かすことができます。一方ロードがコースとなる駅伝は情報源が限られます。箱根駅伝では審判と監督を乗せた運営管理車が選手の後方を追走しています。声かけは5キロ毎に1分と決められており、細かな指示が出ているわけではありません。せいぜいラップタイムや前後との差、コースの起伏や気温に対する状況の変化を伝える程度です。したがって、選手自身が状況を的確にとらえて、レースプランを練り、実行に移していく必要があります。
駅伝の特徴と監督の役割
駅伝はチームとして登録しますが、スタートすれば途中交代や選手変更はできません。任された区間を確実に走り切る自覚と責任を果たす「個の強さ」がまず問われます。ランナーを送り出したチームメイトも次の区間で待ち受けるランナーもタスキを肩に走る選手をひたすら信じ続けるのです。駅伝はそのような思いをゴールという未来に運ぶ競技です。監督は競技力の向上と共に、相互の信頼というチームの風土をプロモーションすることが重要なのです。
人気大会であるが故に
大学三大駅伝の中でも箱根駅伝の注目度は高く、お正月の完全生中継のみならず、前後の特別番組やスポーツ専門紙以外でも特集号が発売されるほど加熱しています。それなりの経済効果やマーケティングの対象として取り上げられがちですが、学生競技者としての足場を踏み外すことのないよう、選手、指導者、主催者は襟を正さなければなりません。またその人気故に箱根駅伝の出場が最終目標となり、マラソン選手育成の弊害になるという批判も持ち上がりました。しかし一方で、2020年東京オリンピック有力候補に箱根駅伝経験者が名前を連ねていることも事実です。今後の箱根駅伝は、選手と指導者によるチームマネジメントと共に、主催者・後援・報道メディアなどが協力して、学生スポーツに軸足を据えた運営を心掛けることが課題となってくるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
山梨学院大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科 教授 上田 誠仁 先生
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