「怖い」がわかれば跳び箱が跳べる? スポーツと感覚との関係

「怖い」がわかれば跳び箱が跳べる? スポーツと感覚との関係

跳び箱が「怖い」

小学校の体育の授業で、跳び箱が怖いために苦手とする児童がいます。怖さを克服させるために何度も跳ばせる、あるいは簡単に跳べるように段を下げる、といった指導法もありますが、怖いという「感覚」により着目することも重要です。児童ごとに異なる「怖い」をひも解くためには、まずは何がどう怖いのかをしっかり聞かなくてはなりません。その結果「固いところにぶつかることが怖い」ことがわかったとすれば、山積みにした布団に突っ込んでみる、ロール状にしたマットなどの柔らかいものを飛んでみる、などの方法が考えられます。

スポーツの現場に生まれる「感覚」

跳び箱のような体育指導レベルだけでなく、アスリートレベルの高度なスポーツの現場においても、感覚は非常に重要な意味を持ちます。例えばレスリングの選手が、相手のわずかな動きを瞬時に察知することで優位なポジションをとる「観察」力も、感覚の一つです。また、体操競技で落下すれば大けがにつながるような大技に挑む選手は、恐怖という感覚を取り除かなければ競技に勝つことはできません。それ以外にも、アスリートは複雑かつ高度な動作の中でのさまざまな感覚に向き合い、うまく制御することが、競技力向上のカギを握ることは少なくありません。

感覚を軸にした研究

人間が持つ感覚は、「現象学」という哲学の一分野にもなっているほど長く研究されてきました。しかし、スポーツや運動の研究分野で「感覚」を持ち出すと、精神論のような非科学的で古い考え方だとされる傾向にあるといえます。確かに、近年普及した映像やCG、データを用いた客観的な研究によって、スポーツのパフォーマンスや指導は著しく向上しました。しかしスポーツの現場には、感覚という主観的な要素を抜きにして語れない側面があることもまた事実です。感覚にフォーカスして、スポーツや運動指導の事例を収集し、それらを理論化させることもまた、スポーツ研究においては重要な意味を持っているのです。

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京都先端科学大学 健康医療学部 健康スポーツ学科 准教授 村山 大輔 先生

京都先端科学大学 健康医療学部 健康スポーツ学科 准教授 村山 大輔 先生

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スポーツ科学、スポーツ運動学

メッセージ

もしあなたがスポーツや体育の指導者をめざしているなら、中身のある指導、言い換えれば一人一人の事情に寄り添った指導ができる指導者をめざしてほしいです。例えばある動作を「怖い」という相手に対して、具体的にどこが怖いのかを一緒に考えて、その怖さを直接解決することこそが、私の考える「中身のある指導」です。本学の健康スポーツ学科には、「感覚」に着目する私以外にも、さまざまなアプローチでスポーツや健康について研究している教員がいます。ぜひ私たちとともに学びましょう!

先生への質問

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本学は世界で活躍する「人財」を育てる5学部10学科の総合大学です。経済経営学部、人文学部、バイオ環境学部、健康医療学部、工学部、それぞれの学部でグローバル化する現代社会を生き抜く「未来を生み出すチカラ」を身につける教育を展開。専門性に加えて、多くの留学生が学ぶ「国際性が日常のキャンパス」で実践的な英語力を磨くとともに、多様性に適応するコミュニケーション能力、デジタル化に対処できるデジタルリテラシーを高めて、激動する社会に向かって自らを築き、世界レベルで活躍できる人材の輩出を目指しています。