転倒を防げ! 高齢者のバランストレーニングに活路を開く
「寝たきり」のきっかけは転倒が多い
転倒による骨折がきっかけで寝たきりになる高齢者が増えています。認知症や脳血管の病気などがなくても、歳をとると運動機能が低下し、わずかな段差につまずいたり、足がもつれたりすることが多くなるのです。一度骨折して寝たきりになると、外へ出たり歩いたりするのが怖くなり、QOL(生活の質)が低下します。そのため、高齢者のリハビリにおいて、転倒予防はとても重要な位置づけとなっています。
高齢者のバランストレーニングの開発
転倒の原因はさまざまですが、理学療法においては歩行時のバランス機能が鍵となります。そこで臨床現場と連携して、バランストレーニングのための歩行練習システムが開発されました。この機器は2本の並列したトレッドミルで構成され、練習者は前方のモニターの数字を確認して、ベルトを歩きながら四隅に設置された該当番号のボタンを押す課題を行います。モニターからは順次番号が提示されるため、ベルト上を前後方向に移動するだけでなく、左右のベルトを乗り移りながら、多方向にバランスをとる練習を促すのが狙いです。よく転ぶ人は、自分の歩けるペースや慣れた動きが決まっていて、イレギュラーな動作に適応できないため、バランスを崩し、転倒します。実際に高齢者に3カ月間効果検証の実験を行ったところ、多くの人でバランスの改善が認められました。個々の歩くスピードに合わせてベルトの速さを調節し、安全性を確保しながらも難度の高い課題を反復してトレーニングしたことが効果につながったと考えられます。
リハビリをより生活に寄り添うものに
いま高齢者のリハビリの現場で行われているのは、単純な筋肉トレーニングや機能回復が主流です。しかし、日常生活を送るうえでは、さまざまなハプニングやとっさの対応に迫られる場面も多く、リハビリにおいてもイレギュラーな動作に適応できるための訓練を取り入れることが大切です。またちょっと難しいバランスの課題を与えることで、認知機能にも好影響を及ぼすものと考えられます。
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関西医科大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 助教 脇田 正徳 先生
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