「ルーティン」はどのようにして作られるのか? 

「ルーティン」はどのようにして作られるのか? 

心を日常に近づける「ルーティン」

メジャーリーグのイチロー選手やラグビー日本代表の五郎丸歩選手は、プレー前に「ルーティン」という決まった動きを行っています。はたから見ると個性的なポーズに目が行きがちですが、本質は彼らがその動作によりセルフコントロールをしていることにあります。人間は緊張すると呼吸や心拍が速くなり、動作も急ぐ傾向があります。特にスポーツのような高ストレスな環境では、そういう状況に陥りやすいため、意識をプレーからルーティンへと向けることで、心の状態を日常に近づけているのです。

癖を組み込んでいく

ルーティンは無意識に行う癖の中から生まれます。動きだけでなく視線も重要で、例えば野球であれば球場のポール、バレーボールであれば体育館の一点を見つめるという決めごとを自分の中に作ります。何か言葉をつぶやくのもいいでしょう。癖は自分では気づきにくいため、コーチやビデオカメラといった「第三者の目」を活用します。
プレーに入ると余計なことを考えなくなるため、プレーの直前、静から動へと移るときが望ましく、また「やらなかったから失敗した」と思い込むような、脅迫観念につながる行動も避けます。そう考えると凝り過ぎず、シンプルなルーティンの方が実践しやすいでしょう。

コーチによる適切なメンタルマネジメントの理解

スポーツにおける心の重要性は広く知られるようになりましたが、まだメンタルマネジメントのためのメンタルトレーニングが現場レベルで正しく実践されているとは言えません。特に部活やアマチュアスポーツで多く見られる「行き過ぎた指導」を抑止するため、2016年3月に「グッドコーチ」を育成するための「モデル・コア・カリキュラム」がまとめられました。日本のコーチングの最大の問題は、「過剰」であることです。コーチが教え過ぎ、プレーに口を出し過ぎると、選手は自ら考えて行動しなくなります。それより選手の自立心を促し、自らモチベーションを上げる環境を作ることが大切なのです。

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山梨学院大学 スポーツ科学部 スポーツ科学科 教授 遠藤 俊郎 先生

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スポーツ心理学

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メッセージ

パフォーマンスには必ずエビデンスがあります。野球のピッチャーがどうして狙ったところに速い球が投げられるのか、そこには筋肉を動かし、エネルギーをボールに伝える「バイオメカニクス(生体力学)」があります。
しかし、どんな高い能力があっても、それを試合で発揮できなければ意味がありません。緊張と無縁な人もいれば、体が委縮し練習通り動けない人もいます。そこが、人間がするスポーツの面白さであり、その心理のメカニズムを解明するのがスポーツ心理学であり、メンタルマネジメントはその一領域です。

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