多様化するスポーツメディアに求められるものとは?
スポーツの価値を投げかけるメディア
スポーツは感動、歓喜、期待感、高揚感、ときに絶望といった人間の感情をかき立てます。スポーツの魅力、つまり心を揺さぶる瞬間を発信する役割はスポーツメディアが担っています。その在り方がスポーツの価値を多角化、あるいは拡幅させていることは紛れもない事実であり、その変遷の中でスポーツの価値も広がりを見せてきました。
一元的に受け止めない意識
スマートフォンの登場はSNSや動画配信を一般化させ、スポーツメディアの形は大きく変わりました。戦後は新聞の活字やラジオの音声のみでしたが、現在は国内外、競技を問わずリアルタイムでも視聴ができる環境に様変わりしました。
一方、現代は情報の精査が求められる時代でもあります。紙媒体、Web媒体、YouTube、SNSには真偽不明のものを含めた多くの情報が流布されています。また「オウンドメディア」と呼ばれるチームや選手が自ら発信するメディアもいまや一般的です。何事においても、発信された情報を一元的に受け止めない受け手側の意識も大切な要素として認識しなければなりません。
「神の手」から学ぶスポーツとメディア
技術の革新、そしてスポーツメディアの影響において例に挙げられるのが、マラドーナの「神の手」です。1986年のサッカーワールドカップでマラドーナは手を使ってのゴールが認められ、メディアは「神の手」と大々的に伝えました。しかし、現在のルールに照らせばVARが介入し、ゴールは取り消しになります。世が世ならこの得点は存在せず、逆に強く批判するメディアのほうが多かったでしょう。大会で優勝したことや、メディアの伝え方、風潮も大きく影響して彼は伝説になりましたが、このように時代やメディアの報じ方によって、アスリートの輪郭はいかようにも変化します。スポーツシーンをどう切り取り、どう伝えるか、スポーツメディアに携わる人は常に客観的な視点を持ちながら、世の中にその魅力を訴え続けることが重要です。
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