水素が与えてくれる、持続可能な社会への夢
宇宙も私たちも水素で成り立っている
水素は138億年ほど前のビッグバンの時にできた元素の一つです。周期表の最初に記されているように最も小さな元素で、かつ宇宙の元素の重量の7~8割は水素だと言われています。周期表にある120種類近くの元素は、水素が核融合してできたものであり、地球をつくっている元素も同様に核融合で誕生しました。
水素は身の回りのさまざまなものに含まれています。もちろんあなたの体にも水素がいっぱいあります。ですから水素は資源としても、エネルギー源としても重要な元素なのです。
水素を切り貼りして、新たな物質を生み出す
例えば燃料電池は、酸素と反応して水を出しながらエネルギーをつくるという、水素の性質を利用したものです。その逆に、水から水素と酸素をつくり、クリーンな社会を実現しようという国家プロジェクトも進行しています。
水素は炭素や窒素、酸素など、いろいろな元素と結合します。結合とは手と手をつなぐように、元素と元素を結ぶことです。その結合をナノメートルという10億分の1メートル単位の世界できれいに切り貼りし、生活を豊かにしたり、地球環境問題を解決したりする物質(分子が集まったもの)をつくろうという研究が盛んになってきました。
再生可能な資源の活用へ
人の体や植物は非常に安定した有機化合物でできています。天然資源としての化合物は体内のタンパク質(アミド)や脂肪(エステル)の中にもあり、エネルギー源であるグルコースは呼吸などによって燃やされるとCO₂になります。触媒の力を借りてこのCO₂に水素を付加させれば、アルコールを生み出せます。
自然界にも多く見られ、CO₂から光を使っても合成できるカルボン酸という化合物も、水素化することでアルコールへの変換が可能です。アルコールは少ないエネルギーで燃料や医薬品、農薬や化粧品の原料にもなるため、こうした研究がさらに進めば天然資源やCO₂といった、これまでないがしろにされがちだった物質の変換、すなわち有効利用が実現できると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 理学部 化学科 教授 斎藤 進 先生
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