金属材料を安全に使うには、耐食性の測定が不可欠!
腐食のしやすさがわからない新しい金属材料
私たちの身の回りでは建築物や乗り物、日用品など、さまざまなものに金属材料が使われています。これらの金属材料に錆(さび)などの腐食が生じると壊れて事故などを引き起こす場合があるので、実際に使う前には十分な検討が必要です。特に合金や不純物が混じった新しい金属材料の場合は、イオン化傾向がわからず腐食のしやすさが判断できません。また金属の表面には不動態皮膜という薄いバリアのようなものがあり、腐食から金属を守っていますが、それも金属材料によって異なるのです。そのため新しい金属材料を使うときは、耐食性(腐食のしにくさ)を調べる実験が必要となります。
さまざまな機器を使った金属材料の調査
金属材料の耐食性を調べるには、電解質溶液に金属を浸して、金属が溶け出すときの電圧や電流値を「ポテンショスタット」という機械で計測します。さらに安全に金属材料を使うために、さまざまな機器を使って新しい金属材料の細かい性質も調べます。例えば3次元アトムプローブという機械を使って金属中の原子の配置を調べたり、共焦点レーザー顕微鏡を使って金属が溶けていく最中の凹凸を測ったりします。
水素脆化を起こしにくい金属の研究も
さまざまな金属材料で耐食性の実験が行われていますが、腐食のほかにも問題があります。近年増えているのは金属と水素にかかわる研究です。水素は環境にやさしいエネルギー資源として注目を集めていますが、水素原子が金属の中に入ると、もろくなることが多いのです。これを水素脆化(ぜいか)といいます。水素脆化が起こりにくい金属材料の開発が盛んに行われていますが、水素は顕微鏡で見えないため評価が難しいという課題もあります。そこでコンピュータシミュレーションを使ったり、理論的に推測したりして、なんとか評価を出そうと試行錯誤がされています。金属材料の研究は目立ちにくいですが、金属製品などを安全に使うためになくてはならない分野なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
富山大学 都市デザイン学部 材料デザイン工学科 准教授 畠山 賢彦 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
金属工学、材料科学、電気化学、物理学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?