「鉛筆の芯」が化学の力で見たこともないような製品に化けるかも!?
「鉛筆の芯」から飛行機の部品が作れる?
将来、自動車や飛行機の部品、コンピュータの電子回路などが、「鉛筆の芯」から作られるようになるかもしれません。鉛筆の芯の原料は黒鉛ですが、黒鉛は層状であり、構成する1枚あたりの層は「グラフェン」と呼ばれています。グラフェンは、あらゆる物質の中で最も速く電子や熱を通し、平面状での炭素原子の結合はダイヤモンドよりも強固です。さらに、安定した物質の元素としては、トップクラスの軽さです。
したがって、半導体部品をグラフェンで作れば、コンピュータやスマホが大幅に高性能化できるほか、熱伝導用のさまざまな金属製品も、軽くコンパクトにすることが可能です。飛行機や自動車の骨格にグラフェンを使えば、現在のアルミやマグネシウムの合金よりさらに軽く、強度も高いボディを作ることができます。
難しい抽出と加工
グラフェンは、炭素原子が蜂の巣のような六角形格子構造で結合した、シート状の物質です。上述した素晴らしい特性を持っていることはわかっていますが、原子レベルの厚みのシートを取り出し、目的に合わせて加工する技術が確立されていません。
そこで現在、黒鉛を酸化して酸素を取り込ませた酸化グラフェンを取り出し、加工した後、還元してグラフェンに戻す方法が研究されています。グラフェンを「1枚のシート」として取り出せることがわかったのは、2000年代に入ってからなので、研究の発展が期待されています。
グラフェンを利用した新素材の可能性
グラフェンは液体と馴染まない性質がありますが、インク状に加工すれば、電子回路を「印刷」することができ、電子機器の製造コストが大幅に削減できます。曲げることもできるので、人体に取り付ける医療用やスポーツ科学用のセンサー類にも応用できます。
冷蔵庫や靴箱の脱臭剤として用いられている「活性炭」も、炭素の加工品の1つですから、グラフェンを応用して超強力脱臭炭を作ることも期待できます。このように化学分野の研究は、まだ誰も見たことのないモノを創造する力を持っているのです。
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先生情報 / 大学情報
佐賀大学 理工学部 理工学科 化学部門 准教授 坂口 幸一 先生
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