変身したニュートリノを写真に撮る!?
ニュートリノをつかまえろ!
素粒子は、さまざまな物質を構成する最小単位で、その一つである「ニュートリノ」には質量がないと考えられていました。しかし近年の研究で、実は質量を持つことが確実になったことから、それを検証しようと世界中で研究が進められています。
ニュートリノには「電子ニュートリノ」「ミューニュートリノ」「タウニュートリノ」の3種類があり、「ニュートリノ振動」という現象を起こすことで、それぞれ別のニュートリノに変身します。ニュートリノ振動は質量がなければ起こりえないため、変身したニュートリノを確認できれば、質量を持つと結論づけることができるのです。
壮大な国際共同実験OPERA
日本や欧州など世界11カ国の共同研究チームによるOPERA実験では、スイスの実験施設(CERN)で光速まで加速した粒子を衝突させてミューニュートリノをつくり、それを約730キロ離れたイタリアの検出器へ向けて飛ばします。素粒子が飛行する間に、タウニュートリノに変身したかどうかを調べるのです。
タウニュートリノから出てくるタウ粒子は、1ミリほど飛ぶとすぐに壊れてしまうので、つかまえるのは至難の業です。しかしこれを可能にしたのが「原子核乾板」の技術で、2008年から4年間で、タウニュートリノに変身したと考えられる飛跡(ひせき)2例をとらえることに成功しました。
技術や装置開発も重要なテーマ
原子核乾板は特殊な写真フィルムで、3次元的にニュートリノの飛跡をとらえることができます。ハガキサイズの原子核乾板と鉛板を交互に重ねたフィルムカメラを15万個並べて記録するものですが、その膨大なデータを解析する飛跡読取装置もより高速なものへと、開発が進んでいます。ここで面白いのは、原子核乾板も飛跡読取装置も、研究者の手によって開発されることです。ビッグバンで生まれ宇宙を満たしていると考えられるニュートリノの正体を解明するために、装置開発や実験技術を追究することも研究の重要なテーマなのです。
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