低コストで安全なハイブリッドロケットとは?

低コストで安全なハイブリッドロケットとは?

コストが高い現在のロケット

ロケットには、大きく2つの方式があります。1つは、液体燃料を液体酸化剤で燃焼させる方式、もう1つは、火薬などの固体燃料を固体の酸化剤で燃焼させる方式です。これらは、現在のロケットの主流ですが、爆発の危険があり、さらにコストが高いという課題があります。まず、燃料コストがかかります。それに加え、安全対策にお金がかかります。大きな推進力を得るために爆発性のある燃料を燃焼させるので、安全確保のために発射場の敷地を広くして、設備を強固なものにしなければなりません。もちろん、設備の維持管理費も必要になります。

コストは10分の1に

そのため、費用を抑えたロケットの研究開発が行われています。それが、固体燃料と液体酸化剤を組み合わせた「ハイブリッドロケット」です。燃料も水素や火薬ではなく安価なプラスチックを使用します。このロケットエンジンの最大の特徴は、爆発しないということです。燃料である円柱状のプラスチックの中心に貫通穴を開け、そこに液体酸素を噴き付けることで内側から外側に燃焼させてガスを発生させます。そのガスがエンジンから高速で噴出することで推進力を生み出します。コストは一般的なロケットの10分の1程度で、燃料が爆発しないので、安全確保のための費用も機体の製造費用も少なくてすみます。

推進力の強化が課題

このロケットが普及していないのは、推進力が弱いからです。それを解決するには、一瞬の間に燃料をより多く燃焼させることが必要です。そのために、より燃えやすい材料の開発が行われています。例えば、ロウはプラスチックよりも低い温度で燃焼します。また、燃料を燃えやすい構造に加工する研究も行われています。プラスチックに単に穴を開けるのではなく、もっと複雑な形状にして、液体酸素の流れに乱れを生じさせ燃焼を促進させる研究です。
日本でも海外でも、ハイブリッドロケットの開発はまだ発展途上ですが、実用化されれば安価なロケット打ち上げが可能になり、宇宙ビジネスを推進する原動力になるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 工学部 先進工学科 機械工学プログラム 教授 片野田 洋 先生

鹿児島大学 工学部 先進工学科 機械工学プログラム 教授 片野田 洋 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

流体力学、宇宙工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の専門は流体力学です。なかでも、気体を対象とした「圧縮性流体力学」の研究を行っています。その応用として、ハイブリッドロケットの研究開発に力を入れています。ロケットにとって流体力学は、空気抵抗を少なくするための機体形状の開発や、強力なガス噴射を可能にするエンジンの開発などを行うために必要不可欠な学問分野です。
また、日本で唯一、大型ロケットの発射場がある鹿児島県にとって、ロケット開発は重要な産業です。進取の気風あふれる鹿児島大学で、あなたも次世代のロケット開発に向けて一緒に研究しませんか。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

鹿児島大学に関心を持ったあなたは

鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。