意外に知られていない「木の生き様」のこと

意外に知られていない「木の生き様」のこと

木も生きるために戦う生き物

人の手の入らない森林では、激しい生存競争が繰り広げられています。競争に勝ち、高い木に成長できれば十分に日光を浴びることができますが、うまく成長できなければ森林の下層という暗い環境で生き延びなければなりません。そのために光や水分、栄養を求めて、地面と水平に枝葉を伸ばす木もあります。耐陰性のある針葉樹の中には、まるで傘のように枝葉を成長させて不思議な形を形成するものもあります。体の一部の成長をわざと止めておき、光を受けられるようになると成長を再開させる木もあります。静かにたたずんでいるように見えますが、木はその環境によって戦う生き物としての姿を見せてくれます。

知られてない木の中のメカニズム

では私たちの周囲にある公園の木や街路樹は、日の光でただすくすくと成長しているだけなのでしょうか。年輪を観察すると、四季を通して水を通す細胞の径が変化しているのがわかります。春は細胞の径を大きくして、水をぐんぐん吸って枝葉を成長させますが、秋になると径はほぼ閉じてしまいます。木の体の中は、非常にダイナミックに活動をしています。しかし、実は構造や材質などの詳細はあまりわかっていません。

森林大国だからこそ、もっと木を知る

日本人は昔から、スギやヒノキ、カラマツなどを使って家を建て、橋をかけて、生活道具を作るなどあらゆるシーンで木を利用してきました。こうした資源として利用される造林樹種は、長年にわたり人の手で計画的に育成されて、保護を受け、伐採され、製材されてきました。しかし、それらがどういった性質を持ち、造林樹種に適しているとされたかなどは、今後も科学的知見を積み重ねていく必要があります。例えば、せっかく製材した木がひび割れしたり曲がったりして、商業的に使えなくなることがありますが、それは木の材質や構造が原因となっていると見てよいでしょう。知見を積み重ね、木の材質や構造が解明できれば、加工過程での不測の事態を回避でき、木材ロスの削減にもつながります。

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先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 農学部 農学科 助教 安田 悠子 先生

鹿児島大学農学部 農学科 助教安田 悠子 先生

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木質科学、木材解剖学、樹木生理生態学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分の興味を大切にしてください。将来の自分にとって有益なことを選択するのは当然です。でも、もし興味のあることに挑戦できる機会があれば、逃さないでください。得るものがあるかは分かりませんし、失敗するかもしれませんが、やってみないとそれが自分にとってどんな意味を持つのかも分かりません。挑戦することでしか得られない経験がありますし、その過程での失敗は人生の転機になることが多いと感じます。社会に出る前にたくさん試行錯誤を繰り返すことで、きっと自分のなりたいものや、やりたいことが見えてくるはずです。

鹿児島大学に関心を持ったあなたは

鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。