樹木の内生菌って何? 森林生態系の不思議を探る
森林全体を健全な状態に保つ
森林に被害をもたらすものには、気象や自然災害などの非生物的要因、鳥獣や昆虫、樹木病害などの生物的要因、そして森林破壊など人為的要因によるものがあります。このうち生物的要因については、例えば線虫の一種が松に感染して引き起こす松枯れなどが問題になっています。しかし森林保全については単に被害を防げばよいのではなく、生態系そのものの機能を保つ、調和のとれた保全とは何かを考える必要があります。森林の生態系は多種多様な動植物や微生物が複雑に関係し合い、共に命をつないでいるからです。そのために動物や昆虫、微生物などさまざまな生物と、森林の生態系について知る研究が進められています。
樹木と微生物の関係
微生物の例で言うと、植物の根と一体化して共生している菌類である「菌根(きんこん)菌」というものがあります。多くの場合、菌根菌は無機栄養分や水分の吸収を助けて植物の成長をうながす代わりに、植物から光合成産物を受け取っています。また、健全な植物の組織内部に無病徴(病気を起こさない状態)で入り込んでいる「内生菌(エンドファイト)」の存在も確認されています。内生菌は多くの植物内で共生していて、植物の成長を促進したり、害虫や病原菌から植物を守ったりしていることもあります。
内生菌は未知なる存在
しかし樹木の内生菌の役割や病害との関係については、まだ不明な点が多いのが現状です。例えば、松の針葉に虫こぶを作って入り込む害虫について調べると、こぶの中では内生菌の感染が促進されていたものの、害虫の幼虫も変わらず存在しており、特に害虫を防ぐ効果は確認されませんでした。しかしマツ針葉の主要な内生菌は抗菌作用を持っており、マツをほかの菌から保護している可能性は高いと考えられています。このように、動物や菌類などさまざまな生物の生態を知ることは森林の保全に重要な役割を果たしますが、まだ知られていないこともたくさんあり、日々、研究が続けられています。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
鹿児島大学 農学部 農学科 環境共生科学プログラム 森林保護学 准教授 畑 邦彦 先生
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