安全で低コストの「ハイブリッドロケット」がもたらす革命
従来方式のロケットの弱点
宇宙の研究や開発において、地球と宇宙とをつなぐ輸送手段として欠かせないのがロケットです。従来のロケットの燃料は、液体燃料と固体燃料の2種類に大別されます。液体燃料ロケットは、燃料の液体水素に、酸化剤の液体酸素を加えて猛烈に燃焼させて、強力な推進力を得ます。ただ構造が複雑で、故障が起こると爆発する危険性もあり、製造や運用にも多額のコストがかかります。一方、固体燃料ロケットは構造的にはシンプルですが、いわば巨大な火薬の塊なので、非常に慎重に作らねばならず、作るのにも保管するのにもコストがかかります。
これらの安全面やコスト面での課題を、抜本的に解決できる方式のロケットが現在注目されています。それが「ハイブリッドロケット」です。
高分子技術の進歩が可能にした燃料の製造
ハイブリッドロケットは、燃料に低融点のプラスチック、酸化剤に液体酸素や亜酸化窒素などの液体の酸化剤を用います。液体燃料ロケットに比べて複雑な配管が半分なので、製造のコストを抑えることができます。また、プラスチックや液体の酸化剤はそれぞれ単体では爆発する危険性がないため、運用時の安全性も高く、保管も容易というメリットがあります。
ハイブリッドロケットの構想は50年ほど前からすでにありました。近年になって高分子技術が格段に進歩し、ロケットの燃料に適した性質のプラスチックを製造することが可能になったため、本格的な実用化に近づいたのです。
大学でも研究・開発できる
これからの宇宙研究・開発では、最高の性能を持つロケットだけでなく、より低コストで安全に運用できるロケットも必要とされるようになります。日本では、大学や民間企業で手のひらサイズの超小型人工衛星の開発が盛んに行われており、得意分野といえます。ハイブリッドロケットは、コストや安全性の面で超小型衛星の打ち上げに適していますから、双方の開発の相乗効果に大きな期待が寄せられています。
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千葉工業大学 工学部 機械電子創成工学科 教授 和田 豊 先生
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