講義No.10700 史学・地理学

青銅器はガラケー? 弥生人に見る新たなデバイスの取り入れ方

青銅器はガラケー? 弥生人に見る新たなデバイスの取り入れ方

青銅器をつくる鋳型

弥生時代、日本社会の基盤となるさまざまな文化が大陸から朝鮮半島を経由してもたらされました。銅とスズ、鉛の化合物でつくられる青銅器もその一つです。朝鮮半島からの玄関口である九州北部に製品が持ち込まれ、そのすぐ後には青銅器づくりの技術も伝来します。青銅器は、熱で溶かした金属を鋳型に流し込む鋳造という方法でつくられます。青銅器そのものだけでなく、鋳型を研究することで、当時の青銅器がどこでどのようにつくられ、流通していったのかがより詳しく見えてきます。

弥生人の行動原理

鋳型の素材は石と土に大別されます。近畿地方ではある段階で、石からより精巧な文様を鋳出せる土に切り替わりました。しかし、九州地方では石で鋳型をつくり続けます。福岡平野の遺跡から出土した石の鋳型は、直線距離で40kmほど南に離れた矢部川で産出される石英斑岩でつくられています。また、石の鋳型は鉄器を使って彫られていたようです。あえて重たい石を遠くから運び、鉄器を使って青銅器をつくっていたわけです。合理性という観点からは理解しがたい面もありますが、だからこそ、現代人にはわからない価値観や理屈に基づいて行われていたと推察されるのです。

モノから見えてくるヒトの本質

青銅でつくられた鏡も、当初は中国から贈られたものを使用していましたが、次第に自分たちで見よう見まねでつくるようになります。まだ漢字が理解されていないため、中国の鏡に施されていた文字を模様のようにとらえ、再現していたことがわかっています。
青銅器は、日本人がはじめて触れた金属であり、現代の携帯電話のように生活を一変させるような存在でした。私たちの祖先は新たなデバイスに出会ったとき、どのようにとらえ、生活に取り入れたのか。青銅器という「モノ」の調査を通して、人間の普遍的な性質や行動に迫ることができる点も、考古学研究の大きな意義なのです。

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九州大学 共創学部 共創学科 教授 田尻 義了 先生

九州大学 共創学部 共創学科 教授 田尻 義了 先生

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考古学、青銅器研究

先生が目指すSDGs

メッセージ

遺跡は、どんな時代のものであれ、歴史の断片の一つです。自分のルーツや、現代のあり方を知る大きなきっかけにもなり得るものですから、昔のこととして切り離さずに、関心を向けてみてください。
幸いなことに、あなたが住んでいる周辺には、少し歩けばいつの時代かの遺跡に行くことができます。なぜそれらが今も残っているのか、どういう役割を果たしていたのかといったことに、少しでも興味を持ち、調べてみてほしいです。考古学は現在につながっている学問です。

先生への質問

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九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。