「人材不足」の日本! 産業の動きを地域ごとに把握する
全国の状況
日本の介護業界が深刻な人材不足にあることは、ニュースなどで耳にしたことがあるでしょう。一人の求職者あたり何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」は、令和4年度の福祉分野では4.23倍です。1倍を上回れば人材不足であるとすると、これはかなり深刻です。
都市部と地方の差
一方で、この年の有効求人倍率を都道府県別に見ると、福岡県の13.02倍から徳島県の1.42倍まで非常に大きな差があります。概して地方の方が都市部よりも人材不足が穏やかな傾向です。多くの産業が集積する都市部では求人の業種が多いため、拘束時間が長く肉体的にも精神的にも負担が大きい介護職よりも、クリーンなイメージの事務職に人材が流れがちです。しかし、他の産業が少ない地方は選べる仕事の種類が限定されるため、給与面で安定している介護職は貴重な雇用先となっています。全国一律に人材不足ではあるものの、都市部と地方では状況が大きく異なっています。また近年では、介護の人材不足に対して、外国人労働者で補う政策が国によって進められています。この政策においても地域間の差が現れています。一般に外国人を雇うにはある程度のノウハウが必要で、例えば特定技能の場合、登録支援機関を利用するとそこへの支払いが必要となるため、先行投資が可能な経営状態にある都市部の大規模施設ほど積極的です。また地方で外国人を雇っても、介護福祉士資格を得ると外国人コミュニティのある都市部へと転職する傾向があります。技能実習が廃止され新制度として転職を認める「育成就労」になることが議論されており、都市部に偏る傾向はさらに加速すると懸念されています。
政策の効果が出ない?
日本国内でも、経済状況は一律ではなく地域によって差があります。そのため、同じ政策を展開しても、地域によっては効果が限定的になる可能性もあります。特に現在の日本では、都市部への人口集中が加速して地方との差が広がっています。介護業界に限らず、産業の動きを地域ごとに把握することは非常に重要なのです。
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