墓からわかる人の歴史と社会
墓の研究
人類が遺したモノ資料を研究する考古学は、人類の誕生から現在までの幅広い時代を対象としています。地中から発掘するばかりではなく、墓をはじめ地上にも多くの文化財が存在します。かつて、墓は社会的地位の象徴でした。例えば古墳の中でも特に大きい前方後円墳は、有力な王や豪族の墓です。江戸時代になると、墓石を建てることが広く普及します。各地に残された墓石の大きさや形を研究することで、その地域の歴史や社会について知ることができます。
絵師の「狩野派」
東京都大田区にある池上本門寺には、室町時代から江戸時代にかけて活躍した絵師集団「狩野派」の墓が90基ほど残されています。教科書にも載っている狩野探幽は特に秀でた才能の持ち主で、狩野派の地位を確かなものにした人物です。探幽の墓はひときわ大きく、裏には銘文が刻まれています。また、落款印(作品におす印章)のモチーフであるひょうたんの形をした分骨墓も存在します。
江戸幕府に仕える御用絵師のうち最も格式の高い奥絵師は、狩野四家(中橋家、鍛冶橋家、木挽町家、浜町家)が代々務めていました。奥絵師は城の中核となる本丸の障壁画などを描く、非常に重要な役職です。指揮役は時代によって変遷していきましたが、考古学の研究により、これが墓の大きさや形に反映されていることがわかりました。江戸時代の後半には、亀趺(きふ)という亀の形の台座の上に墓を建てた、木挽町家が指揮役を務めていたようです。
3D技術による歴史の保存
墓石のような立体物は情報量の多い文化財です。これまでの研究では、大きさや形を「実測図」として記録したり、刻まれた文字を「拓本」として紙に写したりしていました。しかし、現代の3D技術によって立体のまま記録できるようになったことで、研究のスピードが加速しています。墓石の研究では、従来のように1基ずつ捉えるのではなく、地域など広い範囲で捉え直すことで、各時代の社会を明らかにしようとしています。
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先生情報 / 大学情報
立正大学 文学部 史学科 講師 本間 岳人 先生
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