「欠陥」が成功のカギ?! 全固体電池の開発

「欠陥」が成功のカギ?! 全固体電池の開発

充電時間が短いのに長持ちする電池とは

あなたのスマホのバッテリーは、1回の充電で、通話時間や使用するアプリなどにもよりますが、だいたい2日しかもたないのではないでしょうか。サイズは同じなのに、1回の充電でこれまでの何倍も長持ちして、充電時間は短く、しかも劣化しにくいバッテリーが開発されれば、エネルギー分野における大きな一歩となるでしょう。そんな可能性が期待されているのが「全固体電池」です。

「取り扱い要注意」なスマホのバッテリー

スマホなどに使われているバッテリーは、リチウムイオンが電解液を介して、正極・負極の間を移動する「リチウム二次電池」です。通常の乾電池の電圧は1.5ボルトであるのに対し、リチウム二次電池は3.7ボルト程度なので、同じ電流を流した場合でも多くの“仕事”をします。しかも、充電量に対して小型・軽量に作れるため、近年はあらゆる製品のバッテリーとして使われています。しかし、その高い電圧に耐える電解液は引火性が高く、バッテリーケースに密封されているので、場合によっては発火・爆発事故につながる恐れがあります。また、落としたりぶつけたりして破損すると、電解液の液漏れなども生じて不便です。

「欠陥」が意外な用途で役に立つ

一方、全固体電池はその名の通り、正極・負極はもちろん、電解質も固体なので、液体を持ち運ぶことによるさまざまなリスクを回避できます。ただ、リチウムイオンが自由に移動できる電解液と違い、イオンが強く結合している固体の中で、イオンを移動させるのは簡単ではありません。ポイントになるのは、結晶中の「欠陥」です。イオン結合の一部が切断され、イオンが入り込める欠陥、つまり「すき間」が適度に空いている状態を作り出せば、固体の中を狙い通りにイオンが移動できるわけです。そういう状態を作り出す、あるいはそういう特性の材料を生み出すための研究が、機能材料学の分野で積極的に進められています。また、これら最先端の電池研究は脱炭素の鍵となる研究分野です。

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先生情報 / 大学情報

東北大学 工学部 材料科学総合学科 教授 高村 仁 先生

東北大学 工学部 材料科学総合学科 教授 高村 仁 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

機能材料学

先生が目指すSDGs

メッセージ

東北大学のモットーの1つに、「今が大切」という言葉があります。世界に先駆けて材料物性の研究を創始した、本多光太郎先生の言葉です。
あなたが今、学校で学んでいる事柄は、知識の基礎体力にあたります。そして、「研究者・技術者になりたい」という夢があるなら、基礎体力の上に、あきらめない気持ちやチームワークを大切にする行動を積み重ねなければいけません。研究にはたくさんの協力者が必要だからです。勉強だけではなくクラス行事や部活動なども、一生懸命にやるようにしてください。「今が大切」なのです。

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建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。