コンクリート劣化測定の最新技術 構造物を安全で長く使用するために
コンクリートが劣化する原因とは
コンクリートの劣化はいかにして起こるのでしょうか? コンクリートは、セメントに水を加えて固めたものです。中には、鉄筋が入っています。セメントは、酸化カルシウム、二酸化ケイ素などでできています。水と反応することで水酸化カルシウムが生成され強いアルカリ性になります。これによって鉄筋の錆(さ)び(酸化)を防ぎます。ところが、コンクリートにある穴から二酸化炭素が侵入すると、アルカリ性が中和されて、鉄筋に錆びが生じるようになります。塩害でも同じ状態になります。錆びで鉄筋が膨らむとヒビ割れして、さらに錆びが進み、コンクリートが劣化するのです。
劣化状態を分析するための最新の測定装置
コンクリートが劣化すると必要な強度を保てなくなるため、最悪の場合、構造物が崩壊します。そこで、コンクリートの劣化状況を知ることが必要です。塩害の原因となる塩化物イオンの濃度を調べるのが「EPMA」という分析装置です。一方「XRD(X線回折装置)」は、コンクリートが塩化物イオンや二酸化炭素と反応してできる化合物を測定します。確認された化合物などの存在状態を調べるのが、断面を拡大して調べる「SEM(走査型電子顕微鏡)」です。また、「TG-DTA」という測定装置では、熱変化で起きる質量変化を調べることで、水酸化カルシウムや炭酸カルシウムの量を調べることができます。
今ある構造物をできるだけ長く使用する
構造物を長く安全に使用するためには、維持管理が必要です。測定装置の発達で簡単に劣化状況を知ることができるようになりました。また品質のよいコンクリートを造るためにも、最新の測定装置は不可欠です。
現在、高度成長期である1960年代の構造物も多く利用されています。40年以上経っているので劣化が進んでいるものもありますが、新しい構造物を造るのは財政的な理由から難しくなっています。ですからコンクリートを化学的に調べる知見は、ますます重要になっているのです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 工学部 教授 河合 研至 先生
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