世界が驚く革命的な電池を開発するためには?
20世紀は物理の時代、では21世紀は?
最近、自然エネルギーや再生エネルギーが注目を集めています。これらを活用するために最も重要になるものが電池です。太陽電池やリチウム電池は21世紀の人類にとって、極めて重要な技術です。こうした電池は電気工学ではなく、材料化学で考える必要があります。効率のよい電池開発には分子レベル、原子レベルでの精密な設計が求められるからです。20世紀が物理の時代だったとすれば、21世紀は化学の時代です。
リチウムイオンの動きが充電池の性能を決める
充電池の代表がリチウムイオン電池です。これは電極にリチウムイオンが出入りすることで充電、放電を行います。そのため電極にはリチウムイオンが入る場所を作る必要があります。しかしリチウムイオンの大きさは、0.1ナノメートル前後と極めて微細なので、小さなイオンの動きを正確にコントロールし、電極の結晶構造のすき間に収まる設計が求められているのです。こうした原理は同じですが、製品化されたリチウム電池の性能は、メーカーごとに異なります。実はメーカーは片っぱしから実験してみて、ある時点での最もよいやり方を採用しており、開発は決して理論的に行われているわけではないのが実状です。つまり化学反応を思い通りに制御するのは極めて難しいということなのです。
より革新的な電池開発をめざして
現在、電極に使われている素材はコバルト酸リチウムです。ところがコバルトはレアメタルであるため、将来の供給に不安があります。そこでコバルトを使わないリチウム電池の開発が研究課題となっています。また、今はリチウムイオン、つまり陽イオンが電極に出入りすることで充電、放電をしていますが、陽イオンと同時に陰イオンも活用できれば、より効率が高まります。そのために使える素材を見つけることも重要な課題です。こうした課題がクリアされたとき、大出力、大容量、しかも安全と、三拍子そろった画期的な充電池が開発される可能性が高まります。
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先生情報 / 大学情報
金沢工業大学 バイオ・化学部 環境・応用化学科 ※2025年4月名称変更 教授 露本 伊佐男 先生
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