お墓が引っ越しをすると、どう変わる? 人は何を思う?
大きなお墓で大宴会!?
「墓場で宴会をやろう!」というと、あなたは不謹慎に思うかもしれません。しかし、沖縄県ではおよそ10~25平方メートルの敷地に花崗岩やコンクリートで家のような形のお墓と庭を造り、親族が集まって宴会をする「清明祭」という習慣があります。沖縄は明治初期まで琉球と呼ばれた独立王国で、本土とは異なる文化を持っています。また、沖縄のお墓には「〇〇家」のような文字は元々刻まれていませんでした。集落と墓地は近く、文字がなくてもどの家の墓か皆が知っているからです。では、子ども世代が島を出てよそに移住すると、お墓はどうなるのでしょうか?
引っ越ししたお墓から何が見える?
お墓を故郷に残したままにすると、距離が遠くてお墓参りがしにくく、掃除や管理も行き届きません。そこでお墓も引っ越しをすると、引っ越し先の様式に合わせた形に変わってしまいます。本土では、平均1平方メートルほどの狭い敷地に墓石を購入して建てるのが通常です。そんな新しいお墓に戸惑いながらも、自分の家のルーツを石碑に刻んだり、前のお墓の一部を使ったり、家にあった樹を植えたりする人たちがいます。そこには、住む土地が変わっても先祖や故郷の家とつながりたい、継承していきたいという思いが見てとれます。
日本人にとってお墓は重要で身近なもの
お墓の引っ越しを機に、多くの人は「お墓とは一体なんだろう」「なぜお墓参りをしたいのだろう」と、お墓や先祖について考えます。そこから、お墓はその人が生きる上で重要なものであることがわかってくるのです。インドのヒンドゥー教徒のように遺骸を川に流す国や、マレーシアのイバン族のように遺体は埋めても墓石はなく、お墓参りもしないなど、国や地域、民族によって墓との関わりは大きく異なります。このような祖先祭祀や死者儀礼などの伝統的な文化も、実は少しずつ変わりながら継承されています。お墓の研究から、生きることはどういうことなのか、人が移動することによって文化がどう変わっていくのかを知ることができるのです。
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東北大学 文学部 広域文化学 文化人類学専攻 准教授 越智 郁乃 先生
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