安価で資源豊富な元素を用いて次世代蓄電池を作る!

ナトリウムを使った新しい蓄電池
「リチウムイオン電池」は性能に優れた電池ですが、レアメタル(LiやCo等)を含むため、その確保に課題があります。そこで、海中にほぼ無尽蔵に存在し、安価なNaを用いたナトリウムイオン電池の開発が進んでいます。最近、その実用化が始まりましたが、まだリチウムイオン電池の性能には若干及びません。そのため、ナトリウムイオン電池の負極材料に着目し、性能を上げる研究が行われています。
化粧品材料への工夫により負極性能が向上!
その一つが酸化チタンです。酸化チタンは安価・豊富で無害なため、日焼け止めや化粧品に広く使用されます。その化粧品用途での色・透明性や塗りやすさが、電池の負極でも重要なことが発見されたのです。ルチル型と呼ばれる結晶構造の酸化チタンは、負極特性が低く注目されていませんでしたが、結晶に不純物を添加(ドープ)したり、原子の配列を整えたりする工夫により、Naイオンや電子が通りやすくなり、実用化材料よりも性能が高まることがわかりました。
酸化鉄も同じく安価・豊富であり、化粧品に使用されています。Naを含んだ酸化鉄が正極に使えることは知られていましたが、負極にも適用可能なことが発見され、正極と負極に用いることで、安価で豊富な資源だけでナトリウムイオン電池を作ることに成功しています。
化学×バイオ=太陽光で充電できる新しいデバイス
再生可能エネルギーの活用のため、太陽光でNaイオンを吸蔵し充電する「光電気化学キャパシタ」が考案されています。その最大の特徴は、植物の光合成に発想を得ている点です。負極の酸化チタンに光が当たると電子が励起されますが、せっかく分離した電子が正孔と再結合すると充電が進みません。そこで、光合成反応で電子を受け渡しするNADPHとその再生を行うクロロフィルを適用し、正孔を埋めて電子を蓄積することで、大きな起電力を継続的に得られるようになりました。光電気化学キャパシタが実用化されれば、電源がない離島や砂漠でも携帯デバイスが自由に利用できます。
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鳥取大学工学部 化学バイオ系学科 准教授薄井 洋行 先生
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