災害現場で生きる宇宙探査ロボット技術
超小型地球観測衛星で世界No.1の画像解像度
まだ謎の多い宇宙を探るため、世界中でより高機能の人工衛星や探査ロボットの研究が進められています。大学で開発された衛星も成果をあげていますが、その1つが2014年に打ち上げられた地球観測衛星「雷神2」です。これは、50×50×50cmの立方体で、重量は50kgという超小型衛星ですが、地表撮影の空間解像度約5mと、この重量クラスとしては世界最高の性能を更新しています。高解像度の画像は、宇宙からの災害監視にも役立ちます。さらに、衛星開発で培われたエレクトロニクス技術を用いて、月探査ロボットの研究開発も進められています。
原発災害現場でのロボットの活躍
月面は大気がなく、最低-150℃以下、最高100℃以上という厳しい温度差、強い宇宙の放射線にさらされているなど、まさに極限とも言える環境にあります。ですから、宇宙探査ロボットの研究は、災害や医療などさまざまな現場へも応用ができるのです。
その一例として、2011年の東日本大震災の際には、福島第一原子力発電所へロボットを送り込み、人が入れない原子炉建屋の内部を遠隔操作でくまなく探査しました。宇宙空間でも正しく機能するエレクトロニクス技術によって、放射能の強い空間でも誤作動することなく、役目を全うすることができたのです。
2種類のロボットを組み合わせた火山探査ロボット
最近、盛んに研究が進められているのが、火山探査です。一度噴火が起きてしまうと、専門家でも現場に近づくことはできません。そこで、空を飛ぶマルチコプター(飛行ロボット)を噴火口近くまで飛ばして上空から現場を撮影し、さらには地上を進むロボットを投下、着陸させて地表を撮影するという、2種類のロボットを組み合わせて現場を探査する方法の実証試験を行っています。人口の密集する首都圏に近い火山がもしも噴火した場合には、大きな被害が生じる可能性があり、噴火活動の状況を適切に評価するための探査技術が、特に期待されているのです。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 教授 吉田 和哉 先生
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