地上から海の交通安全を支える「オペレーター」の役割

地上から海の交通安全を支える「オペレーター」の役割

港湾への出入りを支援する「ポートラジオ」

港を出入りする船は様々です。大型船であれば衝突を防ぐためのAIS(船舶自動識別装置)やECDIS(電子海図情報表示装置)などのシステムを搭載しています。しかし、漁船やプレジャーボートなどの小型船の多くはこういった仕組みを搭載していません。船の出入りが少ない港であれば安全を確保することは簡単ですが、多くの港湾では一般的な航行ルールだけでは危険な場合があります。そのため、中規模の主要な港湾では各自治体が民間企業に委託して運営する「ポートラジオ」と呼ばれる陸上無線局が航行の安全を支えています。

オペレーターの判断基準は経験則

海上保安庁が運営する海上交通センターと異なる、民間のポートラジオのオペレーターは無線の資格を除き、必要な資格は特に定められていません。港湾を出入りする船舶への情報提供や調整のノウハウは個々のオペレーターの経験に基づくものが多いのが現状です。このようなオペレーターの作業実態や作業環境を調査し、問題点を明らかにすることは海上交通の安全にとって重要な課題です。現在、オペレーター業務の性質や内容、行動の態様などの調査が行われています。例えば、船との通信時は重要視する内容、船舶の動きを把握する機器の配置やデータ使用のコツ、船に対して情報提供する時の判断基準など、様々な改善点の抽出が進められています。

AIによる自動化で負担を軽減する

オペレーター業務の調査・研究が進めば、「暗黙知」となっていたベテランオペレーターの判断基準が明確に把握できるようになり、後進の教育にも取り入れることができます。また、調査データを蓄積することで、将来的にはAIなど機械による自動化や効率化が可能な業務も見えてくるでしょう。定型業務の自動化・半自動化を実現できればオペレーターの作業負荷の軽減につながり、船舶とのコミュニケーションを円滑にする心の余裕が生まれます。それが海上交通のさらなる安全性向上にも役立つでしょう。

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東海大学 海洋学部 海洋理工学科 航海学専攻 教授 瀬田 広明 先生

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海洋学、航海学、海上交通工学

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メッセージ

航海士の魅力は、大きな船で様々な国や一般的には観光できない場所にも行けることです。私も世界一周航海で貴重な体験をしました。航海士は海や船が好きな人に向いている、非常にやりがいのある仕事です。よく勘違いされますが、「船員」は「漁師」ではありません。多くは貨物船や客船などの一般商船の職員で、特に外国航路の船員になると海外との行き来が多くなるため、英語力や国際感覚なども必要になってきます。また、船に乗る仕事のほかにも、港湾管理や物流など陸上から船舶の運航を支える幅広い分野でも航海士は活躍しています。

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