好かれたり嫌われたり 外来植物と寄り添うには?

好かれたり嫌われたり 外来植物と寄り添うには?

人間活動が生み出した外来種問題

植物の「外来種」にどのようなイメージを持っているでしょうか。主に明治時代以降に外国から持ち込まれて日本国内で定着した植物を外来種と呼び、現在2000種以上が存在していると言われています。外来種が定着したのは繁殖力が強いからこそで、在来種の生育環境を奪ってしまうものは駆除の対象になることがあります。その一方で、同じように日本に持ち込まれた植物でも、人々の生活に有益な機能を持つものは人間の管理のもとで栽培され、野外に自生している外来種とは区別されています。つまり外来種の問題は、人ありきの問題なのです。

外来種を使った草木染め

野外にある外来種を、伝統的な染色に用いられている藍や紅花のように活用できないかと、各地域で目立っている外来種をピックアップして実際に布へ染色する試みが行われています。現在520種ほどの外来植物の調査が進んでおり、その中ではっきりとした濃い色を出すものも見つかりました。例えば、街路樹で植えられているハナミズキの葉は、鉄を媒染剤(生地に染料を定着させる液)とすることで布を真っ黒に染め上げることができます。草木染めの染色は淡い色になることが多く、はっきりとした色に染め上げる植物は希少性があります。ほかにも、コセンダングサは銅を媒染剤として綺麗な茶色に、セイバンモロコシも同じく銅と組み合わせることで、鮮やかな黄色を出すこともわかってきました。

特産品や環境教育の教材として

濃くはっきりとした染色ができる植物は、今後地域の特産品など新たな活用も期待できます。また、外来種を使った染色自体を教材として、地域の学校での環境教育や生涯学習に生かすこともできます。染色は理科、社会科、家庭科、美術などさまざまな教科の知識を実践する機会になり、大きな学びにつながります。これをきっかけとして、外来種の良い点に気づくことができれば、さらに地域での新しい活用法も見つかるかもしれません。その中から、今後の外来種の植物や自然環境との付き合い方が見えてくるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東海大学 教養学部 人間環境学科 教授 藤吉 正明 先生

東海大学 教養学部 人間環境学科 教授 藤吉 正明 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

人間環境学、環境保全学、資源植物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人間は生きていくためにさまざまな「環境」を必要とし、中でも植物は人間の衣食住に利活用されている、なくてはならない存在です。人間環境学は人とその生活に関わる環境についての学問です。本学の人間環境学科では、人間主体の視点で人と植物の関係を知り、過去の事例を学びながら未来に向けて持続可能な人と植物との関係を見出していきます。野外での調査活動も多く、高校までに学んださまざまな教科の要素が生きてきます。自然環境や植物が好きで、その利活用に興味があるなら、ぜひ一緒に学びましょう。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東海大学に関心を持ったあなたは

海底から、宇宙まで。東海大学の学びは広がり、つながり、そして大きなうねりとなります。さまざまな場所で波を起こし、新しい波同士がぶつかり新たなひらめきが見つかることも。
東海大学は、全国のキャンパス(品川、湘南、伊勢原、静岡、熊本、阿蘇、札幌)に23学部62学科・専攻を擁する総合大学です。この大きな“受け皿”こそが、東海大学の魅力の一つです。社会に役立つ学びが集約された東海大学なら、あなたの興味や情熱に応える学びがきっと見つかります。