めちゃくちゃ複雑な海洋の世界

めちゃくちゃ複雑な海洋の世界

味噌汁の対流と地球規模の対流は同じ?

熱い味噌汁の表面をよく見ると、味噌が下から湧き上がってモクモクして表面に広がっている部分と、比較的狭い暗い部分があることに気づきます。これは、空気に触れた味噌汁の表面が冷やされたことで生じる対流現象が、味噌によって可視化されたというわけです。同様の現象が、地球規模の大気や海洋でも起きています。地球は太陽光によって暖められ、同時に宇宙空間に熱を放出することで温度がほぼ一定に保たれていますが、低緯度域は地球から宇宙へ放出される熱よりも太陽から入ってくる熱が大きく、極域ではその逆となります。これが、低緯度域と高緯度域の温度差を作ります。この低緯度と高緯度の温度差をなくすために大気の南北循環が生じるのですが、これが、原理的には味噌汁の対流と同じ、地球規模の対流現象です。

大気と海洋との循環

海洋は海面を通して大気と接しているので、大気が動けば海面を通してそれが海洋に伝わり海洋が駆動されます。こうして、大気も海洋も循環するわけですが、地球がまさに球であること、自転していることがこれらの循環に決定的に影響し、大気の南北循環ではより高緯度で偏西風が生じ、海洋では黒潮のように大洋の西岸に強い海流が生じます。このように大気と海洋は地球規模で循環しますが、両者の違いは空気と水の熱容量の違いに端的に現れます。つまり、大気に比べて大きな熱容量をもつ海洋は、暖まりにくく冷めにくいという性質のため、気候の急激な変動の緩和装置として働きます。従って、気候変動を考える上で、海洋循環とその熱の挙動を考えることは、極めて重要です。

熱はどこへ?

2000年から約10年間、全球平均気温はほとんど変化しませんでしたが、CO₂濃度はこれまでと変わらず上昇をしていました。この間、CO₂増加によって大気を暖めるはずだった熱はどこへ行ったのでしょうか。海面を通しての大気と海洋の熱のやり取り、そして海洋の中での熱の挙動(循環)を考えることの重要性がわかります。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 海洋学部 海洋理工学科 海洋理工学専攻 教授 植原 量行 先生

東海大学海洋学部 海洋理工学科 海洋理工学専攻 教授植原 量行 先生

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海洋物理学、海洋学、海洋気象学

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メッセージ

大学に合格するためには受験勉強が必要ですが、正しい答えが用意された問題を機械的なパターンに当てはめて解いていても、その受験勉強はあまり役には立ちません。受験勉強は一定程度必要かもしれませんが、解くべき問題の「意図」を考えてみると案外面白く感じるかもしれません。これまでのあなたの表面的な理解が、視点を変えることで深い理解へとつながったとき「わかった!」という感覚を覚えるものです。そうなればそれを考えること自体がとても楽しくなります。僕にとって海洋学はそんな学問です。

先生への質問

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