精度の高い気象予測で、船の安全を守る
きめ細かな気象予測も可能
船が安全な航行をするためには、海の上でのどのような気象現象が起きているか、それはなぜなのかを物理的に解明する必要があります。天気予報は気象庁が観測データをもとにコンピュータで数値計算して、予測した結果を発表しています。気象庁の天気予報は最小で5km四方のマス目の範囲のものですが、局所的な独自の数値計算を行えば数百m四方の範囲での、きめ細かな気象予測をすることもできます。このような局所的な計算をすることで、特定の岬や入り江の風の状況などを予測することが可能です。きめ細かい情報があれば、例えば船舶は台風の強い風を避けて安全な進路を決めることができます。
沿岸域の気象予測は難しい
また、船が着岸する沿岸域は非常に複雑な気象現象が起きます。海岸線を挟んで陸側と海側の沿岸域は気象現象の予測が難しい場所です。陸と海には壁がないので、空気は行ったり来たりします。深夜から明け方にかけては陸から風が吹いて、日中は海から吹きます。つまり風の方向が逆転するので、ある時間帯には複雑な空気の流れが起こります。また、風の吹く方向は汚染物質の拡散や夏のヒートアイランド現象の発生にも影響を与えるので、船の運航だけでなく、社会全体に関わる気象現象といえます。
船の安全な航行のために
沿岸部では明け方に雨が多く降ることが知られていますし、陸上地形の影響を受けて霧が発生することもあります。さらに海岸線の近くに山がある地形や海域の狭い場所では非常に強い風が発生するなど、船の安全航行にとっては問題となる気象現象は数多くあります。陸上では気象現象を観測することは簡単にできますが、海では容易には観測できません。現在では人工衛星からの映像によって海面温度や波、風速などを観測できるようになりましたが、コンピュータによる数値計算によりその精度をさらに高めて、船の安心、安全のための情報提供が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海事科学部 海洋安全システム科学科 准教授 大澤 輝夫 先生
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