人とモノをつなぐ「人間工学」
性能と人のミスマッチ
人間工学とは、簡単に言うと「人間が使いやすいものづくりをするための知恵」です。性能第一で開発した結果、つくられたモノに人間が無理矢理合わせるという時代が続いています。せっかくの高性能なスマートフォンもVRの技術も、機械に弱い人には使いこなせないというミスマッチが起きています。人間工学とは、このようなことを直すため「どうしたら使いやすくなるか?」を考えながら、安全で使いやすく効率的に使える製品を設計する知恵なのです。最近は人間の感性を取り入れたものづくりも研究されています。安全性や使いやすさだけではなく「使ってみたくなる」という付加価値をつけた商品やサービスの開発が不可欠であり、人間工学の考え方が重要になっています。
実践的なフィールドワーク
人間工学を加味したものづくりのためには、ユーザビリティのテストを繰り返し行うのが基本です。例えば、空港の案内表示板や水族館のルート表示のわかりやすさを施設へ出向いて検証して改善案を提案したり、モバイル端末のユーザビリティを分析したりと、人の動きや行動の特徴を端末のプログラムや施設などの設計に反映させる実践的研究をします。また、「システムや作業者の安全を高めるためには何が必要か」を考えることも人間工学のテーマです。どんな最先端技術にも人の手が必ず関わっていますので、働く人の立場や職場環境、さらには私たち消費者や生活環境のことをよくふまえながら「ヒューマンエラー」を防ぐ方法について研究します。
「使いやすい」が当たり前のものづくりへ
高齢化がさらに進む日本では、製品開発の設計段階からユーザビリティを考慮したものづくりが不可欠になります。その基本である人間工学の知識は、ユーザーとエンジニアを結びつける働きをします。ものづくりだけでなくサービスも、利益や効率ばかりではなく「ユーザー=人間」に合った設計が必要です。人間工学は、ユーザーの心や体についての知識を設計に応用して私たちの幸せに繋げるための「思いやりを実現する学問」なのです。
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